業界標準 営業雑感No.39

 前回、標準部品の説明で、国家標準としてのJIS規格の話をしましたが、このように国家や業界で標準を決めるケースが多々あります。それらを、ここでは総括して業界標準と呼びます。今回は、個別のものづくりの話とは異なりますが、社会全体としての標準化について私見を述べます。

 先ず、JIS規格について補足しておきます。通常の業界標準は、所謂、仕様を決めているだけです。ところが、JIS規格には仕様に加えて、部品そのものまで決められていますので画期的です。部品そのものとは、対象部品に関する設計図書(図面、仕様材質など)が明記されているということです。最近ではCADデータもあります。海外に行かれた方は、電源コンセントの形状が同じホテルでも部屋毎に様々である事をご存知だと思います。我が国の家庭用コンセントは100V並行タップだけです。おまけに、必ずコンセントの先に丸い穴が開いています。あの穴は、コンセントが直ぐに抜け無いように、メス型の留め金とセットになって規格化されています。メーカはこの部品を使うことによって効率化が図れますので、これが普及していき、結果、どのメーカも同じ形状のコンセントになりました。このように我が国では社会インフラ廻りの製品メーカがJIS規格部品を採用している為に社会の無用な混乱が除けられています。JIS準拠は法律ではありませんので、自由競争を阻害するものではありあせんが、自由競争の定義により議論のあるところです。

 海外、特に米国型自由競争の世界では、様々な規格は各企業の自由で大きな競争要素とされています。その中で市場に最も受け入れられたものがディファクトスタンダードとなります。従って、ディファクトとは多数決の産物と考えて下さい。ディファクトには特許などの権利も含まれますので、ディファクトを取ることが企業にとって重要です。その為には、NO.1でないと意味がありません。ここで留意して頂きたいのは、ディファクトは、純技術的つまりQで決まるのではなく、宣伝含めたCで決まることが多いということです。ビル・ゲイツとスティーブ・ジョブスのPCでの戦いは記憶に新しいところでしょう。小生、Qでは圧倒的にジョブスだと思います。残念ながら、ディファクトはゲイツにとられました。しかしながら、PCからタブレット・スマホに個人利用端末の主役が変わる際に、ジョブスの技術理念が復活したと考えています。この手の話は、古くはフォード自動車戦争、ソニービデオ戦争など様々あります。自動車は馬車の代替えとして登場しました。御者や厩がいらいないというのが売りで、元々は上流階級向け高級商品でした。フォードは、低価格な大衆車として市場を拡大すべく、自社従業員の給与を上げてまで普及に努めた結果、ディファクトを獲りました。余談ですが、F1に代表されるモータースポーツは、馬車競争の延長で自動車高級路線の名残と考えています。ビデオの世界では、ブルーレイ、ハイビジョンなど現在使われている録画仕様は、全てβです。結果的にVHSはビデオ普及の為のあだ花になってしまいました。

 業界標準には自由競争の結果としてのディファクトと国を含むどこかの団体が決めた標準規格の二つがあります。又、業界標準に対する考え方は欧米と我が国では大きく異なっており、我が国がJISのような国家標準を持っていることを欧米では全体主義(国家主義)と見なしている経済人も少なくありません。

 では、業界標準は何故必要なのでしょうか?もうお気づきの方もおられると思いますが、業界標準とはスムーズな連携の為に存在しています。つまり標準が存在することにより、異なるメーカの商品でも自由に連携することが可能になります。加えて業界用語の定義も合わせて統一されますので、契約行為などの業務面でも効率化が図れるという効果もあります。SOA(サービス指向アーキテクチャー Service-Oriented Architecture)として、組み込みソフトを中心に、ソフト開発の分野でも同様の動きが進んでいます。特に、近年は、クラウドの台頭で、その必要性が高まっています。

以下にIT系で業界標準として定められている代表的なものを挙げます。

・各種コード体系(バーコード、JANコード、図書コード、MEDISマスターなど)

・ドキュメント規約(造船標準図式(SGML)、医療図式(SS‐MIXなど))

・ドキュメント方式(HTML、XML、UML など)

・インターフェース規約(ISOネットワークモデル、全銀手順等の各種ネットワーク手順、RS232Ⅽ、GPIB等の各種信号手順など)

・アクセス方式(RAID、SCSIなど)

 以上のように、何となく聞いたり、使ったりしている言葉の殆どが業界標準に関する言葉です。IT業界は、特に業界標準の多い業界です。但し、ディファクトが多いことから、これまでは利用人口の多い米国が有利でした。但し、多数決の論理に従いますと、今後は、中国やアフリカなど人口の多いところで受け入れられたものがディファクトとして採用されるようになる可能性があります。そこで、米国既存ベンダーはISO等の国際標準へシフトしようとする動きを盛んにしています。残念ながら我が国はその動きに敏感とは言えません。尚、フリーソフトに代表されるオープン化の動きは、自由競争下での営利企業によるディファクトという名のもとの独占支配に対し、無償行為(ボランティア)による情報公開で対抗しようとするものです。我が国では、医療でのORCAや自治体向けなど一部に国家予算で作成されたフリーソフトもありますが、メンテナンスの問題もあり日本市場限定のフリーソフトは難しいと考えています。これらのソフトは、何らかの形で有償化がなされるものと考えます。フリーソフトは、インターネットの普及に後押しされてワールドワイドで認定されたLinuxのようなもので複数人の完全なボランティアで作成されたものが生き残ると愚考しております。複数人のボランティアで作成された代表的なものは、ウィキペディアですが、これらについては別にテーマを設けて話します。

 最後にディファクト戦略の結果として有名な話をします。米国の国内線でのことですが、ローカル路線に格安料金で新規参入した航空会社が、価格競争に持ち込み既存航空会社を排除し、ほぼ独占状態のディファクト化してから値上げをして、それまでの投資を回収しました。その路線を利用していた住民には迷惑な話ですが、現実にあった話ですし、今でも似たような事例は枚挙に暇がありません。米国や中国のディファクト商品は要注意と考えています。業界標準とディファクトの違いを理解して付き合うことが必須です。

以上

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