標準部品 営業雑感No.38

 前回、お話しした標準化を製造段階に持ち込んだものの代表が、標準部品という考え方です。共通部品ともいいますが、製造業では、単に部品化という場合が多いです。本来ならば標準部品化というのが正しいと思いますが略されています。小生は、部品化を進めた結果としての標準部品という言い方のほうがイメージし易いので、標準部品という言葉をよく使っています。「部品表ありき」で、製造の始まりは部品からとご理解頂いたと思いますが、製品の品質(Q)決める上で、最も重要なのが部品の品質です。標準部品はその結晶ともいえるものです。

 一つの部品の不具合が、製品の品質に大きく影響することは、車のエアーバック事件など様々なリコール問題でも明らかです。ご存知かもしれませんが、宇宙衛星に使われる部品は、殆ど一世代前の部品です。電子回路には未だにトランジスタが使われています。何故ならそれらの部品は、世の中で散々使われていますので不具合が終息している、所謂「障害が枯れている」という、最も品質の高い状態にあるからです。この考え方で部品表を見直し、よく使う部品を標準とすることで品質を担保するという標準部品が採用されます。設計段階では、全体から部品へという流れですので、基本的に部品は都度設計されています。設計者や製品種別が異なると似たような部品が山ほど出てきます。これらを生産部品表に変換する際に、製造部門で標準部品を選定します。勿論、設計部門に仕様からみた計算結果に合致しているか?は確認します。標準部品は製造で決めるものであり、設計から見ると制約事項になるということ理解しておいてください。

 製造部門で標準部品を制定している部門は、生産技術部、品質保証部、購買部です。購買部というとものを買うだけの窓口のように考える方が多いのですが、製造部門では部品価格次第で製品価格が大きく左右されますし、品質も決まってきますので購買部の権限は絶大です。加えて、調達先の生産能力や品質管理の状況把握、検査部や品質保証部と連携して購入品の受入検査も指揮しています。生産管理用の部品マスタメンテも殆どが購買部権限です。サプライチェーンマネジメント(SCM)の検討部署も購買です。工場では購買が一番幅を利かせています。

 少し脱線しましたが、標準部品を制定するという作業は、難易度が高く、工数もかかる仕事です。そこで、ものづくり立国をする為に、この標準部品の考え方を国家レベルで採用したものがJIS規格です。国家レベル標準は各国にありますが、製造業に関しては、今のところ我が国は世界一と考えます。JIS規格は、いろいろなものがありますが、最大のものは国家標準部品群です。これらの部品は、図面から仕様まで全ての情報が整っています。この為、JIS規格品を採用すれば、設計は図面を描かなくてもいいですし、購買も外注先との遣り取りが簡略化されます。因みに、購買が外注先に提示する資料の中で最も重要なものも図面です。設計が最後に描くのが部品図で、製造で最初に必要なのが部品ということが、製造業においての永遠の課題です。余談になりますが、JIS規格のお蔭で我が国の電気コンセント形状は一定になっています。水道管やガス管・電球口金具など、サイズや形状などが規格化されています。社会インフラに関する部品の殆どがJIS規格の影響と恩恵を被っています。

 残念ながら、ソフトウェア分野ではこの標準部品が定着化していません。小生の知る限り、これに成功したのがO社です。四半世紀前の組織変更でSEを東京と大阪に集約し、現場には営業を配置するだけで、ソフト開発を全て集中型に変更し工場化されました。当時は、未だオフコン華やかなりし頃で、業界全体が新規開発含めたユーザ固有カストマイズ工数を大きな収益源としていた時代でした。お客様に近いところにいるSEが重宝された時代に、SE集約によるPG(プログラム)の部品化に取り組まれたことは「先見の明」があったといっても過言ではなく、その後の高収益企業体質の礎となっていたと思われます。ところが、Web化の普及により、これまでに作成した標準部品群が陳腐化した存在となり、クラウドへの移行で新たな部品化を進めておられることと思います。クラウドの世界は、次回話します業界標準の動きが進んでいますので、これまで自社で行なわれた部品化とは大きく異なる環境でご苦労されていると推察しております。しかしながら、自社での経験による業種ノウハウを吸収した標準部品群が新たなクラウド標準部品として生まれ変わることにより、業界標準のみに頼っている企業との差別化に繋がるものと思われます。ソフトウェアエンジニアリングというテーマで、様々な考え方や標準が出てきていますが、先ずは自社で標準部品に取り組むしかないというのが、小生の結論です。

以上