DXの進め方(3)名寄せ 営業雑感NO.265

 これまで、DXに伴う業界の変化、「窓口レス」というDXの狙いについてお話をしました。DXが従来ITとは異なる面を持っていたとしても、企業情報システムにおいては、既存ITシステムとの整合性をとってDX推進を行うことは必須となります。そこで、今回は、既存ITシステムをDX向けて整理する最優先課題である「名寄せ」について説明します。

 名寄せについては、これまでにも本雑感でも触れてきましたし、最も身近な事例がマイナンバーです。では、何故、名寄せがDXにおいて必須となるのか?を考えてみます。

 従来ITシステムは、顧客や従業員、商品などの情報を個別に認識する為に、IDや商品コードなどを割り振っておりました。但し、これらの企業や人・物を個々に認識する為のコードについては、それぞれのITシステム毎でユニークな存在でした。ですから、販売管理システムで使用している従業員コードと、人事システムで使用する従業員コードは同一である必要はなく、販売管理システムと人事システムで異なっている場合の方が多かったものです。これには理由があり、販売管理システムを利用する従業員は、正社員だけではなくパートや非正規雇用の方々がおられますが、多くの人事システムにおいては正社員のみを対象としていました。ですから、販売管理システムと人事システムでは管理対象とする従業員の範囲が異なっている為、それぞれのシステムで別管理を行っていたわけです。

 ところが、DXにおいては、一度入力した情報は、組織内のあらゆる業務において利用出来るようにすることを狙いますので、個別のシステムではなく、企業全体でユニークな情報として管理することが求められます。従って、これまでは、販売管理システム、人事システムでバラバラに管理されていた従業員コードを全社で統一することを検討する必要がでてきます。勿論、人事システムだけでなく、勤怠システム、会計システムなど、既存の全てのシステムで使用されている従業員コードを整理する必要があります。一方、従業員コードの桁数や文字種については、各システムでバラバラですので、一気に同じコード体系に統一する為には、それぞれのシステムを一斉に改修する必要がありますので、ほぼ不可能となります。そこで、名寄せが登場します。名寄せとは、従来ITシステムとは独立したシステムとして、販売管理システム、人事システムなどで使用されている従業員コードが同一人物であることを管理するしくみです。

 尚、ITシステムにおいて、ユニークな情報として管理するためには、コードを管理出来る運用体制を確保する必要があります。販売管理システム、人事システムの両方に、新規採用や退職に伴い、従業員コードを登録・削除する運用管理体制を構築されていた筈です。更には、一度登録された従業員コードは、人事システムでは退職後も管理する必要があることから100年単位で管理されるのに対して、販売管理システムにおいては、従業員マスタとして管理する人数を削減する為に10年単位としていたりします。従って、名寄せを行うということは、保存期間を含めて全社で管理する仕組みと各システムで管理する仕組みを整合性がとれる形で構築する必要があります。名寄せの検討においては、運用体制についても従来との相違点含めて充分な考慮をすることが必須となります。

 DXにおける名寄せは、既存情報システムにおいて。システム毎にユニークな存在として管理されている、全ての情報を整理することが必要となりますので、マスタとして管理されている情報を全て洗い出すことが第一歩です。又、マスタ管理はされていない情報においても伝票NO.など、システムとしてユニークに扱っている情報についても把握しておく必要があります。従業員以外にも、顧客コード(販売管理・生産管理・経理など)、商品コード(販売管理・生産管理・経理など)が重要コードと考えます。

 尚、名寄せの方針が決まり名寄せシステムを構築する際には、もう一つ留意すべきことがあります。それは、どこまでの情報を全社共有として管理するかを決めることです。従業員コードについていえば、販売管理システムで管理すべき従業員の情報とすれば、性別・年齢・所属くらいでしょう?ところが、人事システムにおいては、住所・入社年月日・家族構成・保証人から年金番号まで多岐にわたる情報が必要となります。このように管理すべき情報の項目に大きな隔たりが有ることが一般的です。仮に、従業員コードに関する名寄せシステムが氏名だけを管理するのであれば簡単です。しかし、所属も管理するとした場合は、人事システムでは、過去の履歴も全て把握しておく必要がありますが、名寄せシステムでは最新の情報だけしか管理をせず、人事システムの更新時に同期をとって自動的に更新するという細かな取り決めも必要となります。余談になりますが、マイナンバーにおいては、この共有する情報の範囲が不明確になっていることが、混乱の一つの原因と考えます。

 DXにおいて、名寄せは必須です。先ずは、既存の全情報システムのマスタを整理することから始め、運用方法と全社共通に管理する情報を決定して名寄せシステムを構築することになります。

以上