今回は、ジョブ型報酬や所得税改定などの議論がマスコミで取り沙汰されておりますが、これらの政策は、全て米国型資本主義に根ざしたものです。ところが、資本主義は一つとして発言されている評論家も多いようですので、議論が噛み合っていないように感じています。そこで、資本主義の型について私論を纏めます。
先ずお話ししたいのは、ロシアも中国も資本主義国であるということです。現在、世界で資本主義国でない国は、殆ど無いと思います。但し、ロシア・中国の資本主義と欧米の資本主義ではその形は異なっています。一番、大きな違いは株主に関する取り決めと経営における国家への報告義務だと考えます。実は、株主に関する取り決めは欧米でも違いがあり、小生は、その違いから資本主義には、米国型・欧州型・日本型・中国型の4つの型があると考えています。尚、日本型については、小泉政権時代の新会社法によって、米国型が法的根拠となっておりますので、我が国においては消滅しつつあります。
1米国型
企業は株主のものであると明確に定義されている資本主義です。企業のステークホルダーは、顧客・従業員・社会とありますが、株主利益を最も尊重する経営がなされます。その為、業績が最も重視されることになり,ジョブ型報酬が当然のこととなります。加えて、一般企業においてもキャリア制が採用されており。経営者・管理職・一般従業員と明確な層別報酬体系となっております。一般従業員で採用された方が管理職になることは稀であり、経営者になることはありません。この層は、学歴で決まっており、経営者になる方は、IBリーグやMITなどの一流大学卒業生に限られます。彼らは、入社したときから経営見習いとして入ります。管理職は、大学卒業生が中心になり、彼らも課長見習いから仕事を始めます。更には、ジョブ型報酬ですので、経営者も管理職も一般従業員もより高い報酬を求めて転職を繰り返すということになります。更には、株主優遇ということは、起業家にとっては有利になります。つまり、企業を発展させれば、持ち株の価値が大きくなり、最終的にはそれを売ることで莫大な創業者利益を得ることが可能となります。米国の大金持ちは、ほぼ全てこの創業者利益を元手とした投資で生きておられます。勿論、財団などを設立して社会貢献もなされていますが、米国では、これらの費用が納税から免除されますので、ある意味、納税するか?金銭的社会奉仕を行うかを選択出来る税のしくみになっています。ふるさと納税による所得控除とは、根本的に違う構造です。
2欧州型
ご承知のように資本主義発祥の地は欧州です。古くはローマから始まり、近世イギリスで体系化されました。米国型との一番の違いは、貴族階級の存在です。欧州各国には、今でも貴族は存在していまし、領地も持っておられます。但し、多くの領地は国家に貸し出しています。無償の場合もありますが、基本的に借地権で設定されています。ですから、主要株主が元領主で、経営者は貴族に使えた執事という会社が多く存在していました。その後、フランス革命に象徴されるように市民権が確立されていきましたが、株主として貴族階級が生き残っています。労働者は領民という概念ですので、領国反映と企業反映を同義とするような企業風土を持つ会社も存在しています。又、領主に対抗するためのギルドが存在していましたので、職業別組合として形を変えて力を持っています。階級制が残った資本主義形態であるため株主優先という形態ではなく、むしろ株主責任が追及されることもあるのが欧州型です。余談になりますが、マルクス主義=共産主義と習ってきましたが、領主と領民の関係を引きずった資本主義へのアンチテーゼとして見直すことが必要だと考えています。
尚、ロシアや他の全体主義国家における資本主義は、欧州型の貴族株主に独裁者がとって代わっただけの構造だとみていますので、欧州型の悪しき亜流と考えています。
3日本型
明治維新後の欧米化の一環として進展した日本型ですが、欧州型のように貴族階級が存在しなかったのは廃藩置県により大名の権利を大きく制限したことに起因していると思います。加えて、江戸末期から商人による経済活動は進展しており、為替制度や先物取引も行われていましたので、三井・三越などの呉服屋や両替屋が企業に変身していきました。従って、「商家の習わし」であった終身雇用や暖簾分けという概念が企業経営にも取り込まれました。又、株式投資よりも銀行による企業貸し付けが進展していきました。これにより、銀行を核とする財閥という特徴的な企業グループが発展していきました。更には、御用商人の概念が生き残り、政治家との結びつきを強く持った政商が生まれています。又、戦国時代から強く残っている「一所懸命」という概念で生まれた土地に根ざした郷土への貢献という考え方と事業永続性を持つ地場企業も沢山生まれております。
4中国型
国家ではなく共産党一党独裁という構造を持つ国の資本主義ですので、株主として共産党が存在する構造を持っていると考えています。一方で、華僑としてよく知られていますように商人文化も長い歴史をもっています。この二つの考え方が融合した考え方がこの先にどうのように変化していくかは判りませんが、「一帯一路」構想も包含した新しい資本主義の型が間違いなく生まれるように感じています。
循環型社会の構築を目指すのであれば、我が国も米国型にきった舵の延長にあるジョブ型報酬・人材流動・個人投資などの政策を推進するのではなく。新しい日本型資本主義を目指すべきではないでしょうか?
以上