今回は、マイナンバーの狙いを考察いたしましますが、先ず、理解いただきたいことは、マイナカードの目指すものとマイナンバーの目指すものは、全く異なっていることを理解しておいていただきたいと思います。今の政府の答弁や、マスコミ報道を見ていますと、誰かが意図的に混同させているようにも考えています。といいますのも10年以上前に国民総背番号制についての賛否議論があり、当時のマスコミでは反対派が優勢でした。この議論の目先を変える政策的な狙いがマイナカードにあったと勘ぐっており、これが余計な混乱を招いているように思います。
前置きが長くなりました。前回、マイナカードは「DXにおける本人認証」を狙っていると考察しましたが、マイナンバーは「デジタル社会での氏名」を狙っています。マイナカードの登録で同姓同名者の存在やカナ氏名における小文字の問題などが取り上げられていますように、これまでのアナログ社会においては、氏名を読む人の判断で個人を識別されていた氏名ですが、デジタル社会においては氏名だけでは、異なる人物と判断されることもあります。デジタルの社会では、銀行の口座番号、各種会員番号、運転免許証番号、保険証番号など、個人を認識する番号は、システム毎に異なっています。従って、アナログ時代では、長らく個人を識別する手段として汎用的に活用されていた氏名でしたが、デジタル時代においては、氏名は汎用的に個人を識別することが出来ず、デジタル社会において国家として個人の認識を汎用的に保証する番号として発行されたのがマイナンバーです。
氏名とマイナンバーを比較して見てみます。氏名も実は国家で個人の認証を保証されています。それが戸籍です。出生届で登録され死亡届で抹消されます。戸籍には本人を認識する手段として氏名を国家として保証するという一面を持っています。ご承知のように戸籍も70年代以降はITで管理されていますので、デジタルで個人を認識するための戸籍番号があります。本来はマイナンバーとはこの戸籍番号に集約すれば良かった筈です。ところが、この際に課題となったのが、住民番号との整合性です。自治体システムは、それぞれの自治体で独自に運用されていましたので、それぞれの自治体でそれぞれの自治体内だけで個人を認識する住民番号が付番されていました。そこで、この住民番号と戸籍番号を合体させて全国統一することを狙ったものが国民総背番号でした。公的機関が使用している番号としては、住民番号だけでなく、パスポート番号・母子手帳番号・国家資格認定番号などがあります。そこで、これらの番号を統一して管理するためにマイナンバーが創設されました。このマイナンバーと既に発行されている各種番号を紐付けることで公的機関における個人を一元的に管理することが出来ます。尚、この紐付け作業は、既に、各システムで保有している番号とマイナンバーを紐付ける作業ですので、マイナカードの発行とは関係なく行えます。更には、マイナカードと民間が保有している各種個人番号と紐付けていくことで、デジタル社会において氏名に代わり、国家が保証する汎用的な個人識別手段としてマイナンバーを活用するというのが、マイナンバーのめざすべきものです。
以前にもお話をしましたが、小生は、先ずはこの公的機関における番号を統一し、各種申請手続きの簡略化を図ることを第一義とすべきと考えています。カードを活用するとしても従来の住基カードに変わるものとして限定的に使用すれば、混乱も少なかった筈です。公的機関での氏名に替わるマイナンバーでの個人識別が定着してから、社会保険や税金、運転免許証をはじめとする国家資格へと順次拡大していくべきだったと思います。先ず一つの情報を確実に移行し、その検証が終わってから、次の情報へと順次拡大していくという方式がアナログからデジタルへの情報変換を行う際の王道です。
以上のようにマイナカードの普及とマイナンバーの活用は、別次元の課題です。デジタル社会における個人認識手段としてのマイナンバーが定着してからマイナカードによるDXでの個人認識を狙うべきだったのではないでしょうか?その意味で、今回の保険証への全面適用や運転免許証への拡大は、何を狙っているのか?が判りません。どこかの業界の利益を助けている政策でないことを祈るばかりです。
但し、マイナンバーによる「デジタル社会での個人識別」とマイナカードとマイナアプリによる「DXでの本人確認」を国家として保証する方針を示したことは、大変有用であると思います。その実現の手順に手違いがあったように思えます。
以上