今回は、小生が、これからの働き方の主流と考えております「多能工」について纏めます。「多能工」とは。製造現場で使われる言葉で、一人の作業者が複数の職務をこなすことを指し、最初に使われたのは、大量生産から多品種少量生産に移行する際に、ベルトコンベアで次々に流れてくる半完成品をネジ締め担当、半田付け担当などと分業制で作業を行い完成させるベルトコンベア式生産形態から、一つの製品を完成させるまで一人の作業者がネジ締めから半田付けまで全ての作業を行うショップ式生産形態に移行する際に、製品完成までを一人行う作業者を育成する際によく使われた言葉です。
その後、静岡の建設業者が、木組み、壁塗りなど分業が当たり前だった建設現場に採用し、建築学を専攻した優秀な大学生を雇用し話題になったことを覚えている方もおられると思います。このように、小生は「多能工」という考え方を大きく捉えるべきと考えています。古くは「半農半漁」と呼ばれた農業と漁業の兼業や閑散期に出稼ぎをしていた兼業農家も「多能工」の延長にあると考えています。昭和のSEの中には、小生が半農半SEとからかっていましたが、農繁期には休暇をとって実家で農作業を手伝うSEも多くおられました。最近では、半農半Xという概念も生まれています。小生は、大賛成です。
インターネットは「多能工」と極めて相性がいいと考えています。ユーチューバーの大半は兼業です。又、コロナ禍でリモート勤務が普及したことにより、これまでは厳禁だった社員のアルバイトについての社員規定を見直す機運も盛り上がっています。以前から申していますようにインターネットは時間と空間を超越しています。加えて、自由に検索できる大量の情報も蓄えています。AIは、これらのインターネット情報を使って様々な業務遂行をサポートします。インターネット活用が、更に進展していき国境を越えてAIの支援を受けた様々な兼業家も出現すると思います。
働き方改革もDXと一緒に考えられますので、インターネット活用が前提となりますので、企業においても同様です。前回お話ししました今後の企業におけるICT部門については「多能工」のこれからのモデルになると考えています。つまり責任者と少数の専門職を本部に配置し、日常業務は各現場にいるICT担当者によって運営する組織を想定しています。現場のICT担当者は、現場業務を主担当としICT担当を兼務することになります。以前から大企業で採用されていましたワーキンググループ的な組織形態です。ICT部門に限らず、マーケティング部門設計部門、品証部門、保守部門など、このような「多能工」を活用する下地を持った組織も沢山ある筈です。製造・保守を考慮したフロントローディング設計、マーケティングと営業を一体化したWeb販売など、その萌芽ともいうべき概念は既に実施されています。
お気づきのとおり企業における「多能工」組織とはマトリックス組織になります。マトリックス組織を成立させる為の最大の課題は人事制度にあると考えています。現状の人事制度の根幹となる評価制度には、一次評価、二次評価という段階評価はあっても、評価の基本は組織員と評価者は1対1の関係にあります。マトリックス組織においては、評価の公平性を担保するためには、一次評価の段階でも多能化している業務毎に評価者が存在することが必要と考えます。従って。一人の組織員に対して複数の評価者が存在する1対nの評価方式を採用することになります。ここで問題となるのが評価のために必要とされる作業です。通常は面談があります。小生の経験では、この面談作業に時間がかかっておりました。従って、1対nとなると時間的な考慮も必要となります。更には、日常の業務遂行にあったても業務毎に報・連・相が必要でしょう。従って「NO.237 人事考課私案」でお話ししましたような新しい評価制度と同時にマトリックス組織を考えることになります。人口減少と過疎化という課題を抱えてしまった我が国です。更なる付加価値極大化と生産性向上を追求せざるを得ない企業にとって「多能工」を人事制度の基礎とする企業経営の登場を期待しています。
以上