前回、「佞臣」を例に挙げて「ごますり・ひらめ」を戒めましたが、実際には、部下のゴマすりに気付いている上司は多いものです。昔、ある方とお話をした際に「ゴマをする部下は可愛い」と言われましたので、小生からは「ペットを可愛がってもいいけれど、ペットは人の上に立たせてはいけないのでは?」とお返しをしました。ゴマをするという行為は、人に対する行為であり、企業の本来の目標である付加価値拡大には、直接貢献しないために人事考課には影響させてはいけないというのが持論です。
さて、人に対する行為が正当化されやすい組織体が派閥です。出身地、学歴など様々な繋がりで閥は形成されますが、企業において最も注意すべきは、特定の取締役級の方を頂点とする派閥です。この派閥の形成の核となるのは、営業・設計・製造・経理など職種によるものや、事業部制をとっている企業では出身事業部など、職務に関係するものが多いと考えます。この職種閥に学閥が絡んでくると嫌な雰囲気になりがちです。
派閥の持つ特性のうち好ましいものを先に述べます。一番は、実践的な教育の場となることです。小生は、教育の場において最も重要な存在は「師匠」と位置づけでおります。師匠と弟子の間にある尊敬と思いやりが、知識の習得だけでなく職業人において必須となる実行力を養います。持論では、職業人として不幸なことは、師匠がいないことだとしています。その意味で、配属先上司に左右されることなく師匠を見つけ易い環境を派閥は提供していると思います。次に挙げるのが、協力体制が直ぐに作れることです。仕事は一人で行うものではありませんので、常に、協力をしてくれるメンバーが揃っており、新人であってもベテランを含む協力者を得られることは大きな利点と考えます。
派閥の陥りやすい欠点は、派閥の長が派閥を私物化して「ごますり・ひらめ」の温床とすることですが、そこまでに行かないまでも、企業の利益よりも派閥の利益を優先する傾向があります。その結果として、特定の役職を派閥メンバーで占めることを優先するような事が起こります。派閥が職種をベースとしていることが多いこともその要因とは思いますが、同じ職種の中にも無派閥の方はおられる訳ですので、職務能力についての人事考課に影響を及ぼすことが無いようにすべきでしょう。もう一つの欠点は、派閥争いという対立軸を生むことです。企業内での対立は「百害あって一利なし」です。勿論、議論は必要ですが、本来の企業目的である付加価値向上は、一意団結してこそだと考えます。
派閥の良きところを残しながら弊害を防ぐ手立てとして、小生の考える方策は、派閥の継承を行わせないことだと思います。前回にもお話をしましたように、「ごますり・ひらめ」の繰り返しが、決断力と構想力の低下を招いたように、派閥の継承もそれと同様にリーダの小粒化を招きます。但し、派閥は、組織内での公式な組織ではありませんので、ルールとして介入することは出来ません。結局のところ、人事考課に派閥の長の思惑を入れないことを心がけるしかなく、その為には、複数人評価を確実に行うしか思いつきません。
尚、派閥の継承は防ぐべきですが、師匠の継承は推奨する必要があります。こちらについては、役職には関係無く職務能力を評価する方を「師匠」として認定し、師匠の評価を重んじる必要があります。多くの企業で、マネージャだけでなく、プロフェッショナル認定を行っていると思いますが、この仕組みを発展させるべきと考えます。
最後に小生の考える人事考課について整理しておきます。
1)業績評価・職務能力評価・昇級評価の三種の評価を明確に分離する。
2)全ての評価については、評価項目および評価基準を明示する。
3)最も重要な昇級評価については、目標管理ではなく上司による部下評価を行う。但し、360度評価のような複数人評価をも合わせて実施する。
4)職務能力評価については、目標管理を導入し自己評価能力も高めることも目指す。
5)業績評価は目標管理も導入するが、業績結果で自動的に評価出来ることが望ましい。
6)職務能力については「師匠」を育成し、そのスキル継承を目指す。
以上