今回は、給与決定の基礎となる人事考課について持論を纏めます。人事考課については、大きく目標管理と部下評価の二つがあります。昭和60年くらいから目標管理が普及し、現在は、殆どの企業で採用されていると思います。しかしながら目標設定において数字で判断しやすい売上・利益などの業績に関連する項目が多く採用されたために、昇格や昇級についても業績貢献に比重が置かれることとなりました。更には、目標数値の設定しにくい経理・人事・総務などの管理部門においては形骸化する傾向がありました。振り返りますと年功序列が前提と考える上司による部下評価へのアンチテーゼとして目標管理が採用され、目標数字を明示することで年長者有利の評価を覆すことには効果があったものと考えます。しかしながら、管理職が部下を評価する際に、部下の人物を充分見ることなく目標設定された項目に頼ったものとなり、管理職の「人を見る眼」は養えなかったと小生は総括しています。つまり、管理職にとって、最も重要な能力である筈の人物評価の手抜きになったと思われます。加えて、多くの場合、目標設定時と目標達成評価時に管理職との面談が設定されていますが、この面談にも課題があり、最終的には管理職判断が優先された為に、管理職の恣意が入り込む余地が充分にありました。結果的には、管理職の好き嫌いを反映する為に利用されたようにも感じています。
小生は、目標管理とは自己設定と自己評価を基本とし、これを全従業員に公開することで、各人の「自己を見る眼」を養うキッカケとすべきと考えています。更には、管理職ではなく同じ組織に属している者同士で相互評価をすることも有効です。勿論、管理職自身も目標管理に参加すべきです。目標管理において、管理職の為すべきことは、目標項目と評価基準を決定することで、目標設定にも目標達成評価にもかかわるべきものではないというのが持論です。尚、「自己を見る眼」は「人を見る眼」の土台ともなります。
次に、部下評価ですが、こちらは管理職が部下を評価するもので、従業員に公表するものではありませんが、管理職間では公表し、相互評価で公平性を担保すべきと考えます。従って、評価項目、評価基準については、管理職同士で同意しておくべきです。場合によっては、人事部などで全社統一項目を設定するのも一つの方法でしょう。更には、一次評価、二次評価と最低でも二段階評価を行うことは必須です。
以上のように、小生に考える人事考課とは、自己評価中心とした目標管理と、目標管理を下敷きとして行う部下評価の二つで、報酬に関係すべきものは部下評価のみと考えます。
さて、小生の考える給与体系の決算賞与・等級別基本給・職務手当・管理職手当の4つへの人事考課のしくみを述べておきます。
先ず、管理職手当は、経営者が決定する固定給とし人事考課の対象外としています。管理職として登用するか?否か?を判断するのは経営者判断であり人事考課とは直接は関係しないと考えます。小生の考える組織においては、管理職は課長の次は部長と段階が決まっているものではなく、等級と保有職務によって決められるもので、役職任期についても年度単位に経営者判断で登用と同じく解任もありえるものです。勿論、再登用も可能です。つまり、環境変化に合わせて柔軟に組織を変更し、管理職も自由に任命出来ることは、人事考課ではなく経営者権限としました。
決算賞与については、目標管理を適用しますが、重視すべきは目標設定時の面談だと考えています。業績結果で自動的に結果が判断出来るような目標項目にすることで、組織の期待を数値目標として自覚して貰うことに重きをおくからです。決算賞与は、獲得利益の山分け的なものと考えていますので、全社で結果順位を公表するもの面白いかと思います。業績報酬とは、ある意味、目標達成度合は関係なく、結果数字で評価するものでしょう。
等級別基本給については、部下評価のみで決定すべきと考えています。業績貢献だけではなく、折衝能力、職務遂行能力、部下育成力などで管理職が総合的に部下の人物評価を行うものと捉えています。小生の考えでは、この等級が管理職登用のベースとなります。
職務手当ですが、iDCという職務評価の手法がありますので、このしくみを積極的に活用すべきというのが持論です。職務毎に為すべきことを項目として列挙し、それが出来るか?否か?を評価するものです。評価基準としては、知っている・指導を受けて出来る・一人で出来る・指導出来る・師匠(達人)というような分り易いもので良いでしょう。職務に必要な能力を評価項目として明確にし、職務等級をこれらの評価項目の達成状況で決めることにより、従業員のやる気を自己研鑽の形で、自己目標設定と自己評価で見える化するしくみです。こちらの目標管理においては、報酬に繋がる結果評価については、部下評価と乖離がある場合には面談が必要となります。加えて、結果を公表することで各人の職務遂行能力を全社で共有することも一計です。又、組織長としては、組織構成員の能力を合算することで、自分の率いる組織で必要とされる能力の弱点や、部下指導の方向性も見える化できます。尚、各種資格取得については、職務項目の評価基準の知識背景として活用すべきものと位置づけます。
人事考課は、給与体系と密接に関係します。まずは、現行の給与体系の目標とするところと、人事考課の関係性についても考えるべきでしょう。
以上