今回は、三つの経営資源である人・物・金への経営判断における力点の置き方を考えます。現在は、多くの企業において、金に力点が置かれた経営が為されていると見ておりますが、小生は、人に力点を置くべきだと考えております。そこで、金に力点をおいた場合と人に力点を置いた場合の経営判断の違いを、いくつかの事例を挙げて比較してみたいと思います。
先ずは、お客様の重要度の判断について考えます。
A社は、今年からの新規顧客で商談規模1億、粗利20%と好条件で受注している。
B社は、10年来のお付き合いで毎年1000万前後、粗利10%の取引を頂戴している。
<問題>今の半導体不足のような事態の中で、注文が重なった際、どちらのお客様を優先するか?商談規模は両社とも100万前後で、粗利は、A社は20%、B社は10%とします。
<考察>経営方針として金を力点に置いた場合は、いうまでもなくA社となります。人に力点をおいた場合は、A社との今後の取引も推移を予想する、B社に粗利を交渉する、などして判断することになろうかと思われますが、最終的には長年取引があり人間関係が構築されているB社が優先されると思われます。
次に人材登用について考えてみましょう。
A君は、3年連続で目標を達成しているが、部下からの評判はあまりよくない。
B君は、昨年はやっと目標達成したが今年は低迷している。これまでも目標達成については、達成できる年と未達成の時があり一定していない。但し、部下からの評判は高い。
<問題>今年一人を昇格させるとしたら、どちらを選びますか?
<考察>金に力点が置かれている場合は、ほぼ無条件にA君となるでしょう。一方で、人に力点を置いた場合は、部下だけでなく、他部署や場合によってはお客様の評判などを聞いて判断することになると思われますが、結果としてB君が選ばれる場合も大いにあり得ます。
以上の二つのケースで考えた場合、金に力点を置いた場合は、どちらもA社、A君が選ばれて判断が単純化されます。一方で人に力点を置いた場合は、どちらのケースでもどちらにも選ばれる可能背があり、判断が単純ではないことが窺えます。
実は、小生は、金に力点をおいて経営判断を行うやりかたは、経営判断を単純化して経営者がある意味の手抜きを行っているのではないか?と考えています。特に、経営資源として金と同じ位置づけを持った人に関する人事制度において、人事評価における目標管理、永年勤続の廃止、非正規効用の活用など金を優先して判断する手法を推進してきたことが、経営資源としての人を金より軽視する傾向を強めたと愚考しております。以前にもお話ししましたように、米国での人の評価はお金を稼いでいる人が偉いという概念が定着していますので、米国型経済を導入するために、新しい人事制度が仕掛けられたものではないか勘ぐっています。しかしながら、最近になって、やっと取り上げられるようになりました日本経済の低迷の原因として、人材活用方法に課題があることは間違いのないことだと思います。政府もここにきてリスキリングなどを取り上げていますが、これまでの人材流動化政策との間に矛盾があります。小生は常々「人財」という表現を用いますが、企業における従業員とは、「人財」であると定義しています。人に力点を置く経営に企業が変わっていく中で日本経済も成長できると確信しています。
最後になりますが、人・物・金に関しては、古くから単純な判断基準が沢山示されています。出展と異なる表現もありますが、小生が基礎としているものを挙げておきます。
人に関して
・身分、縁故にとらわれず有為の人を用いる。
・功ある者には金を与えよ、職位は功より徳に従うべし。
・やってみせ、やらせてみせ、褒めてやらねば、人は育たぬ。
物に関して
・お客様の欲するものを必要とする時に、購入可能な価格で提供する。
・余剰の物は、必要とする所を探すことで財となる。
金に関して
・入るを計って出を制す。
・金は金を産み、金のあるところに金は集まる。
以上