電力自給を考える 営業雑感NO.222

 今回は、プーチンのウクライナ侵略で突きつけられた自給自足問題、とりわけ、社会インフラとして必要不可欠となった電力について持論を纏めます。天然ガスの供給禁止に伴い循環型エネルギーへの転換を進めていた電力戦略は見直しを迫られていますし、ウクライナの発電所攻撃による人為的停電を発生させる卑劣とも思える戦略などを見ても、安定的な電力の確保は、国家にとって最重要課題だと思います。とりわけ福島を経験した我が国としては原子力発電についての議論も含めてすべきなのではないのでしょうか?

 充分な議論のないままに閣議決定という不透明な政府見解で原発再稼働を推進しながら、サハリンでの天然ガスの採掘事業の継続については、民間企業の経営判断と責任転嫁をするなど、電力会社と政府のある種のもたれ合い的な電力政策になっているように感じます。しかしながら政治判断についての成否は、歴史の中でしか答えは出てきませんので、これまでとし、ここでは、技術革新について考えます。

 電力を考える場合に、小生が着目するのは、交流と直流の問題です。エジソンは直流を主流として考えていました。これに対し、交流というアンチテーゼを投げかけたのがテスラーです。エジソンの発明による直流発電は非常に高価である上、一気に大きな発電量を確保し、広範囲に供給することが困難でした。この問題を解決したのが交流発電です。交流発電における特許権をテスラーが放棄したことにより、一気に交流発電に流れが変わり現在に至っております。

 現在の電力供給のしくみは、大規模交流発電をして、高電圧で遠隔地まで配電し、トランスで低電圧に変換して家庭に配電するしくみになっています。発電と配電という二つの事業を一体化して提供しているのが、我が国の電力会社ですが、世界の主流は発電事業と配電事業が分離されています。我が国が一体型となっているのは国策会社として電力会社が成立しており、発電設備や配電設備も税金を投入して整備されてきた背景があります。各家庭では、家庭に配電された100V電源を利用し家電製品を使用しています。但し、多くの家電製品では100Vより低い電圧の電力を使用しますので、家電製品にも必ず電圧変換を行うトランス装置が入っています。加えて、半導体の普及により、多く家電製品では、1V前後の低電力で且つ直流電力を使用することが主流になりました。その結果、電圧変換だけでなく交流直流変換を行うことが多くなりました。現在、スマホなどの充電バッテリーでかさばっている黒い箱状の物がこの交流直流変換トランスです。

 直流と交流の大きな違いは、交流は電気信号に干渉するのに対して、直流は干渉しません。その実例がパソコンを中心に普及しているUSB電源です。USB接続のメモリやディスクなどは電力供給と信号情報は共存しています。交流では、LANケーブルと電源ケーブルは分離されて配線されていましたが、直流に変えることで配線作業も大幅に削減される筈です。

 一方、エジソンの時代から変わらず、直流では小電力しか発電できないことと、遠隔地に供給できないという課題を持っています。太陽光発電などの多くの自然エネルギー発電は直流発電ですので、一旦交流に変換して現在の配電網に接続されています。そこで、発想の転換が必要となるのが、前回、お話をした「地産地消」です。現在の交流発電、配電のしくみは、発電所と電力消費地が離れており、配電網で全国をカバーしています。これを「地産地消」の発想で、電力消費地の必要な電力を消費地で発電を行うしくみに根本から変えることです。それは、直流発電、配電に変えることで可能になります。地域に太陽光や地熱、用水路などの水力を利用する小さな直流発電装置を設置し、地域の建物内に直流配線を行います。直流配線とは、今の電源コンセントに変わりUSBコンセントが壁などに設置されることになります。テレビの信号線やLAN接続もこのUSBコンセントを使うことが可能になりますので、アンテナ線やLANケーブルなどの配線も一体化することが可能となります。テレビなどの後ろで絡まっているアンテナ線やLANケーブルなどの配線がシンプルになります。

 加えて、直流の技術革新は進化しており、無線での配電も可能になっています。スマホなどの非接触型充電のしくみが無線配電です。WIFI無線やBluetoothなどを使った電力供給も近い将来に可能となるはずです。そうなれば、配線作業そのものが不要となります。蓄電についても電気自動車搭載バッテリーのように乾電池技術の革新が進んでおります。各家庭に直流発電と蓄電装置が配置され電力の「地産地消」が実現出来る技術は既にあると思っています。但し、電力会社を中心とした現在の業界構造を変えることが必要となりますので、政治判断は必要だと愚考しております。現在、屋根の上に太陽光発電装置を設置した場合は、電力会社に余剰電力を売ることも可能ですが、電気料金として全ての契約者に自然エネルギー利用の追加料金が設定されています。これは、電力会社の損益を保証するためのものです。電力自由化ともいわれておりますが、給電設備は既存電力会社の電信柱などを利用しています。抜本的な電力業界の構造を変えない限り直流発電、給電のしくみを構築することは不可能です。

 余談となりますが、エレベータなどで使用されたいた大馬力を要する為に不可欠とされていた交流モータも、リニヤモータカーや車で採用されている直流モータでも大馬力が発生させることが可能になっています。大気圏外で大規模太陽光発電を行い地上に給電するしくみの構想もあります。原子力発電や火力発電などという交流発電の割合を議論するのではなく、一気に交流から直流への電力変換を考える時期ではないでしょうか?

以上