金融教育考 営業雑感NO.210

 今回は、マスコミで取り上げられることが多くなった金融教育について私見を纏めます。金融教育導入の前提となっている現政権の掲げる新資本主義という考え方の生まれた経緯を振り返りました。小生は、小泉政権が採用した米国型資本主義に、安倍政権が採用した政府介入による株価操作という株主優遇政策を肯定した考え方と解釈しています。そこで、先ずは、新資本主義の骨格について小生の考察を纏めます。

 新資本主義の根本にあるのは、株主至上主義だと捉えています。それまでの我が国では渋沢栄一の「論語と算盤」に代表されるように株主よりも経営者を主体とした資本主義であった為に、企業においては「○○年創業」というように長らく存続することが一つの尺度になっていました。ところが、よくご存じのように創業者が偉大であればあるほど、一代で巨大な組織を構築しますが、そのカリスマ性が薄れる二代目以降になると巨大組織の維持が難しくなり短命で終わる企業も沢山あることは周知の事実です。企業存続ということは、大変、難しいものです。そこで、株主重視の経済社会においては、企業存続は創業者の義務ではなく、株式売却による創業者利益が重視されることになります。TVCMで見るM&Aによる事業継承とは創業者利益を確保する代表的手法です。創業者利益とは、創業者は企業経営と株主という両面を備えていますが、二代目以降は経営者と株主を分離するために創業者を優遇する手法と愚考しています。

 一方で、我が国には財閥と呼ばれるような企業群を代表として、創業100年以上の会社が多く存在します。ここには、明治以降、藩閥と呼ばれる財界人と政府要人の癒着ともいえる相互依存の関係が長らく続いたことも事実ですし、経営者に有利な商法が存在していました。これらの政策は、大戦後の米国占領下において実施された財閥解体から始まる米国の経済介入で潰されました。しかし、この米国政策に抵抗し、解体された財閥企業も含め戦前の企業を存続させるするために、当時の官僚が多くの各種規制を策定していました。つまり日本型資本主義というのは完全自由競争ではなく、社会主義的な側面を持っており、これを規制という形で継続させていたのも事実でしょう。ここに規制緩和の名の基に米国型資本主義を導入した結果が今の状態と考えています。

 前置きが長くなりましたが、この経済政策が継続している前提での金融教育というものが、マスコミが紹介しているような株式購入の為に株価評価を行う手法を学ぶだけになることを危惧しています。現首相は宏池会ですので、創始者である池田勇人首相の唱えた「所得倍増計画」になぞらえて個人所有の株式資産を倍増することを目指しているようです。この為の金融教育というものに疑問を覚えます。カリキュラムが発表された訳ではありませんので、何ともいえませんが、投資だけでなく、為替や銀行、公定歩合などについても学ばせるのが金融教育だと思っていますし、これを理解しておくことは大変重要であるとも思います。残念ながら今の「社会」という教科ではこれらの知識教育では不足しているということには大賛成です。個人の持つ現金貯蓄を株式に代表される金融資産に置き換える為の小手先の手法についての金融教育であれば、政策に寄り添う教育を実施するという全体主義的な動きのようにも思えます。インターネットの普及でネット資産が登場し、貨幣という国家保証による現金主義の経済が大きく変革をとげるのかもしれません。今の時期にふさわしい金融教育が実施されることを期待しています。

以上

2022年9月4日 | カテゴリー : 閑話休題 | 投稿者 : csf-ishii