IT販売チャネルの今後 営業雑感No.149

 今回は、DXの推進を担うべきITベンダーについて考察します。現在のITビジネスの構造は、販売チャネルが介在するものが多く、メーカ直販は限られています。最初は、オフコンや初期のパソコンなどハードメーカに帰属した販売チャネルでした。その後、PC普及とマイクロソフトの台頭で、汎用機やオフコンでは、ハードメーカがハードと一体化して開発していたOS(Operating System)が、ハードから独立して扱われるようになりました。更には、オラクルに代表されるミドルウェアも独立して扱われるようになったことで、ハードメーカの提供する付加価値が減少し、ハードメーカ依存の販売チャネルは衰退していきました。これに変わって登場したのが、特定業種や特定業務を対象として開発されたパッケージソフト(PKG)を販売する販売チャネルで、今は多くの販売チャネルはこの形態です。

 上記の二つのビジネスモデルに於ける販売チャネルがお客様に提供する付加価値は、共通で、販売した商品に関するお客様への導入支援(初期設定、指導、教育など)、個別カストマイズ対応(PKG設定変更、新規ソフト開発など)、運用支援(保守、ヘルプディスクなど)の三つとなります。今後のDXにおいても、導入支援・個別カストマイズ対応・運用支援の三つは、お客様ニーズとして残っていくものと考えています。

 但し、お客様のニーズは変わらなくても、商品側では大きな変化が生じています。

・商品構造について

 クラウドサービスに代表されるようにサービス化が、益々、進展します。

・提供価格について

 提案価格に占める最大費用が、導入費用からメンテナンス費用にシフトしていきます。つまり、導入時費用より月額費用のほうが高くなります。お客様の会計処理では、貸借対照表より損益計算書に影響することになり、キャッシュフローにもこれまで以上に関係してきます。

・付加価値の源泉について

 今後は、益々、お客様からは、業種・業務スキルを求められるようになると思います。又、セキュリティやインターネットビジネスなどの特定分野でのスキルや、AI、DXなどにも関心が高まる筈です。これらのスキルに関しては、従来以上に業務適用可否を判断できるコンサル能力が重視されていくものと考えます。その意味では、導入前と導入後では、具体的にも求められる要件が異なってくるように思えます。

 このように考えますと、販売チャネルとして提供してきた付加価値を、メーカやPKGベンダーから独立して提供できるサービス提供者に様変わりさせることが必須になると考えます。つまり、IT販売チャネルとしての業態は消滅し、お客様に寄り添ってサービスを提供する新しい業態が誕生すると愚考しております。

 新しい業態とはいえ、現IT販売チャネルが生き残りをかけて変革していくものです。その為には、販売チャネルがこれまで提供してきた作業をサービスとして商品化することが必要です。「主体化」と「見える化」の要素を持たせることで、これまでの作業をサービス商品として生まれ変わらせることが可能です。

「主体化」

 販売チャネルとしては、作ったものを売るという役割で、提供する作業にしてもメーカ商品に付随するという考え方が主流でしたが、今後は、自社が提供する各種サービスについては、サービス提供者としてメーカ的役割を担うことになります。

「見える化」

 サービスは目に見えない商品ですので、お客様から見て判り易い形に商品化する必要があります。見える化の要素としては、以下の3点と考えます。

1)SLA(Service Level Agreement サービス品質保証)

 サポート範囲や時間、お客様との責任分界点などを明記する必要があります。定例会開催、インシデント台帳、要件定義書、作業報告書などもSLAの産物です。

2)価格表

 1項)SLAとも関連しますが、都度見積ではビジネス効率が悪い上、お客様都合に合わせ商品メニューが増えていく傾向があります。そこで、SLAを踏まえた商品メニューの整備とメニュー毎での松竹梅の三段階価格付けを推奨します。

3)実績表(モデルユーザの提示)

 理想的なサービス商品は個客対応(うちのことをよく判って貰えている)にあります。2項)定価表の考え方と相反するように見えますが、松竹梅の三段階で価格付けされた商品メニューの組み合わせで個客対応できることを示す必要があります。その為には、実績を踏まえることで形に出来ないお客様満足度を訴求することを狙っています。

 以上を踏まえて、お客様に寄り添った商品メニューを開発する為に、お客様担当SEを明確にすることをお勧めしております。つまり、個々のお客様にご満足頂ける商品を企画する役割を担うSEを設けることです。プロマネに求められるスキルも、PKGを深く理解し効率的に数多くの導入プロジェクトをこなすスキルが重視されてきましたが、今後は、お客様業務を理解し、導入時から効率的な運用支援を実施できることを考慮できるスキルのほうがより重要になると感じております。その為にも、お客様担当SEが中心となり、導入支援から運用支援まで、きめ細かいサービスが提供できる商品メニューを考案することになると思います。SEが商品メニューの開発者と考えます。

 尚、セキュリティやAIなど、特定のスキル分野では、販売行為に中に含まれる導入コンサル的要素が、商品の差別化に繋がると想定しております。このスキルは基本的にメーカが担うべきものですが、新しい業態に変化した販売チャネルがどのように関係するのかは、今後の課題と考えます。

以上