車販売 営業雑感No.132

 今回は、小売業の業態変化サイクルとは、全く異なる動きを見せている車販売について、これまでの振り返りと今後の展開を予想してみます。

 車販売は、世界的にも製造業と流通業の分離が為されておらず基本的にメーカ系列の販売店による実質メーカ直販の形態をとっております。従って、環境変化に伴う小売業の業態変化とは無関係でした。前回のメーカ系列家電販売店との一番の違いは、販売店の資本構成です。販売店では、家電と異なり車は高価な商品であるうえ、納期も長いことから大きな車庫も必要となり資産が高額になります。その為、販売店にもメーカ資本が必ず入っておりました。その後、中古車販売は流通業としてなりたちましたが、外車もヤナセによる輸入販売が定着しただけで、基本は海外メーカ直販店が主流です。メーカ直販になる背景としては、定期点検などのアフターサポートにも法規制があり、昔は車の部品も一つ一つメーカ独自仕様でしたので、メーカによる一貫サポートが有利となることが挙げられます。今は部品の汎用化が図られていますので、サポートについてはメーカ系列からの独立が可能となり、オートバックスなどのカー用品販売店が定着しました。

 近年、エネルギー革命によるガソリンからの脱却を狙いメーカ間の競争が激しくなっています。又、我が国では少子化の動きもあり車販売需要も下振れしています。上記のように製販一体型になっていることから商品の変化とメーカ戦略を見てみます。

 車の歴史は、以前にもお話しましたが馬車の代替えとして登場したことから始まります。その後、石炭、石油、と内燃機関を変えてきました。勿論、その渦中でメーカ交代も起こっています。今回、顕著になっているのが電気のテスラです。車という商品は、燃料補給と定期メンテナンスを必要とするという特色を持っています。従って、ガソリンスタンドに変わる仕組みも必要となります。加えて、今の車はカーナビ、ドライブレコーダ、自動運転と電子制御の塊ですので、ソフトメンテナンスという作業も必須になります。これまでとは、全く異なる業界が創られると思います。

 又、各メーカの戦略も大きく異なっています。トヨタは、電気以外のエネルギーとして水素を狙っています。水素は海洋深層水を原料とする為、資源を多く有する我が国にとっては大チャンスですが、現政府は電気を旗頭にしています。更に、トヨタは未来都市についても模索しており、移動含めた住空間を目指しているようにも思えます。ホンダは、ホンダジェットに代表されるように、航空・宇宙を目指しているようです。マツダやベンツはガソリンの進化系であるディーゼル、ニッサン、中国の国策企業も電気を目指している様子です。いずれにしても、エネルギー革命の方向性はまだ決まっていませんし、複数の資源を活用することになるかもしれません。従って、近未来の車については、未だ見えにくいこともあり、各メーカが持っている現販売網についても先が見えていません。

 しかしながら先が見えないからこその新しい流通形態が登場しています。それが、販売するのではなく貸すというビジネスモデルです。これまでも、企業ではカーリースという金融商品を活用していましたが、これが一般化しています。更に、貸すといっても、その形態は様々で、金融商品であるカーリースの延長から、カーシェア、月額定額レンタカー、メーカ直貸出、又、Web予約とタクシーを組み合わせた商品も出てきました。これらの貸出サービスに共通することは、顧客にとっては、面倒な燃料補給やメンテンナンスという車所有に伴う付帯作業から解放されることです。しかしながら、メーカにとっての最大の障壁は、販売時に確定していた販売利益が、使用期間に分散される上、解約時に損金処理も発生することです。販売先をこれまでの顧客から、貸出業者に切り替えることで乗り切ることも考えられますが、小生はもっと大きな変革が起こると想像しています。

 着目しているのは二点です。販売におけるネット活用は、車においては販売より貸出の方が容易であり、これまでの販売網という膨大な販売コスト削減が可能になります。又、乗り換え需要を見越してマイナーチェンジ含めて定期的に発生していた開発費を削減し、新エネルギー対応重点投資することなども可能になります。定額制、会員制などの工夫により、メーカ自身がこの動きに踏み切るように想像しております。

 車の貸出サービスについては、ガソリンスタンド、レンタカー業、金融業、自動車整備業、大規模カー用品販売店など、様々な業種からの新規参入も始まっています。車だけでなく販売業から貸出業への流通革命も起こるように感じています。

以上