今回は、前回お話をした小売業の業態変化サイクルについて、家電販売の変遷を振り返り、今後の展開を予想してみます。
地域密着 → 集合化 → 大規模化 → 専門化 → 地域密着
家電販売は、昭和の時代までは町の電気屋さんが中心でした。当時は、販売店は販売するメーカが決まっており、松下(現パナソニック)、東芝、日立などのメーカ系列販売店が町角にありました。顧客は最寄りのメーカ毎の家電販売店をいくつか廻って購入しておりました。従って、単純には、より多くの家電販売店を有する方が有利でした。この家電販売店の系列化に成功したのが、松下幸之助氏です。松下氏の方針は、家電販売店とメーカである松下電器は一体であるとの考えから、家電販売店への製品教育、後継者育成など教育制度を充実させていたのが特徴です。顧客に対するきめ細かなサポートを販売店に委ねることで顧客サービスの向上と顧客の囲い込みを狙っており、長期にわたる取引関係の確立も目指しておりました。この考え方を顕す有名な言葉が「共存共栄」です。この方式は、車のスズキなど、家電以外の業界でも採用され、今でもメーカ系列販売店政策の模範とされております。少し脱線しますが、当時は松下電器とは言わず「ナショナル」と呼んでいました。風聞によりますと、海外進出をした際に、ナショナルという言葉が、ナチズムやナショナリズムを連想されることからパナソニックに改名したそうです。
次に、都市を中心に登場してきたのが、ベスト電器、星電社、上新電機、北村電気などの家電販売店です。その後の家電量販店との一番の違いは、最初はこれらのお店は、各メーカの代理店に加盟しており、売り場もメーカ別に明確に分かれておりました。顧客からすれば、お店を何軒も廻る必要がなく、一カ所で比較検討できるというのが売りでした。その後、一括大量仕入れによる低価格を打ち出して量販店へと変化していきます。その過程において、カメラや音響製品など、家電とは異なる分野の商品も取り扱うようになり、カメラや音響製品を扱っていた販売店もまた、家電製品を取り扱って、今の家電量販店に変化していきます。この時、松下電器は上記のような販売店網を確立していた為に家電量販店対応に遅れをとりました。
尚、家電販売においては「専門化」の動きに未だ至っておりません。その理由として考えられるのがPCを代表とするIT機器や健康ブームに乗った健康機器など、新市場開拓を目指す家電以外のメーカが、家電量販店を販売チャネルとしたことにより百貨店の様相を呈しました。更には、家電製品の技術革新が速く、低価格・大衆化に向かっていった為に、高付加価値を追求する「専門化」に至らず「大規模化」に留まっていると考えております。一方で大規模化に留まっていた為に、お店の差別化が難しく、より資本力のあるお店に吸収されていくという構造になっているのではないでしょうか?
テレビ通販を使って低価格路線を強力に推進したのが、ジャパネットです。ジャパネットは、お店を持たない為に販売経費を既存の量販店より安く抑えることが可能で、その結果として低価格が実現されています。加えて、簡潔に商品を短時間で説明するという当時のテレビ通販の常識を覆し、製品紹介よりもその利用シーンを10分以上具体的に見せることで顧客の購買意欲を刺激するという手法を導入しで販売を伸ばしました。この利用シーンを紹介する手法はソリューション販売と言われております。インターネット登場の前に、テレビ通販という新しい販売形態を開拓したことは、特筆すべき販売形態の変革と愚考しております。
さて、今後のネット社会における家電販売の在り方ですが、小生は、ネットを使ったメーカ直販に回帰するように感じております。既に、PCの世界ではメーカ直販が当たり前になりつつあります。但し、ジャパネットが指向しているソリューション販売は引き継がれ、現インターネットサイトにおける商品写真ではなく、動画が活用されると思います。その為には5Gの普及が必須でしょう。更には、家電には故障に対するメンテナンスが必須となりますので、故障品回収と修理後の送付、代替機の提供などを、コンビニを活用したり、運輸会社と連携したりと、新たな手法が検討されると考えています。又、今後の家電製品は、IOTの考え方でインターネットに繋がることが必須となりますので、その操作方法やセットアップ方法、使い方相談のヘルプデスクなども各メーカのホームページを使って周知されるものと考えます。同じ商品を使っている顧客同士のSNSなども登場してくると想像しております。又、現在でもいくつかの家電販売店が好業績を上げております。これは、メンテナンスや操作指導などを顧客に寄り添って行う顧客密着を推進していることに起因しているようです。これらの販売店とネット型メーカ直販の組み合わせも生まれるかもしれません。
以上