酒販売 営業雑感No.133

 今回は、古くからの因習と法規制に縛られていた酒販売について、これまでの振り返りと今後の展開を予想してみます。

 酒販売は江戸以前からある商売ですので、酒蔵から小売りまで販売網も古くから整備されていました。酒は発酵製品であり鮮度も重要でしたので、地域毎に限定された販売網で量り売りでした。余談ですが、酒は伏見が一番だったようで江戸では「くだりもの」と言われて重宝されていました。「くだらない」という語源はここからきており、伏見酒に劣る江戸酒のことを指していたそうです。尤も、店ごとに水を足すのが当たり前のようになっていたようですので、酒の良否は造り酒屋だけの問題ではなかったようですが。「水増し」の語源もこの逸話によります。

 その後、酒税が創設されてからは、量とアルコール度数が厳密に管理されるようになり、現行の一升瓶による流通が一般的になりました。酒税の不正を防ぐ意味もあり販売店も免許制でした。又、酒の小売販売は、酒屋だけでなく料理屋も大きなウエイトを占めておりますので、料理店にも卸す卸が力を握る構造になっています。加えて、酒名の入った暖簾、杯、徳利や前掛けなどの販促品が大量に流通しており、今もその名残がありますが、小売店や料理屋ごとに贔屓の酒蔵が明示されていました。これらの販売促進をしておりましたのも卸です。この日本酒の流通形態に洋酒やビールなども便乗しました。洋酒については卸が力を持っておりましたが、国産ウイスキーの登場でメーカが力を持つようになり、サントリーによる海外蒸留所の買収が進んでからは、洋酒卸の力は弱まっています。このような流通形態であった為に酒蔵も卸に認められなければ独自銘柄を販売することが難しくなり、灘や伏見の大規模酒蔵に酒を樽で販売することが一般化し、地場酒蔵は減少していく傾向にありました。尚、免許制による小売販売は米も同様で、酒同様に家庭ごとを回る御用聞き販売でしたので、米屋と酒屋は深い関係にあり兼業も多くありました。

 昭和後半の税制改革や規制緩和の影響で、酒税が大きく見直されたことにより状況が一変します。酒についても大規模安売店の登場により、御用聞き中心に各家庭に密着していた酒屋の小売形態が一挙に衰退しました。又、コンビニの登場で多くの酒屋がコンビニのフランチャイズに参加しましたので、酒は配達されるものから買ってくるものに変わりました。酒蔵による直販や卸任せにしていた小売店の囲い込みも始まりました。現在も料理店へ販売している小売や卸は、昔の御用聞き形態を継承していますが、コロナ禍で大きく変わるかもしれません。

 一方、焼酎ブームに代表されるように個別銘柄が重視されるようになり、地方の酒蔵が活性化しました。日本酒においても、既存酒蔵優先で閉鎖的になっていた国内市場をあきらめて海外進出をして成功し、里帰り需要を伸ばす酒蔵が登場しました。又、樽買いの一般化で衰退していた地方の中小酒蔵が合併や組合化により、既存の大規模酒蔵に対抗するようになっています。その背景としては、酒税改正の関係から、特級酒、二級酒など等級でしか表せなかったものが、純米酒、大吟醸など自由に商品を造れるようになったことが大きいと感じています。

 ネット販売による本格的な流通変革は、これからと考えます。ネット販売の最大の利点であるメーカ直販の形態が未発達です。多くの酒蔵はHPを開設していますが、本格的な販売ページを作っているところは少ないようです。加えて、楽天、アマゾンなどの販売サイトでも卸の出店が多く、酒蔵の出店はまだ少ないようです。今後の方向性として、酒蔵サイトの活性化が必須です。酒蔵の生産量は樽数に限定されていますので、ワインやジンで実施されています予約販売や、一部銘柄で実施されている試飲会なども、これからは企画されると考えております。コロナ禍の影響もあり、試飲セットやオンライン酒蔵見学、醸造家庭の動画など様々な企画の登場を待たれます。酒は嗜好品ですので、会員制などメーカ直結がキーになるように感じています。

以上