小売業の変遷 営業雑感 No.130

 今回は、小売業の業態変化については考えてみます。小売業の一番単純な形態は行商ですが、それは除いて考えます。昔の小売業は卸業との関連が強く米屋、酒屋、雑貨屋、パン屋、文房具屋など商品別の販売形態をとっておりました。酒、米などは戦後の配給制度を引きずった規制もありました。その影響で、田舎では米屋、酒屋が兼業で様々な商品を売っていました。小売店が一カ所に集まったものが市場で、全国いたるところにありましたし、市場の大規模なものが商店街というイメージでした。

 次に、登場したのが百貨店です。一般の小売店で売っているものより高価なものを様々に取り揃えていました。元呉服屋が多かった理由は、江戸時代に最も高価な商品が呉服でした。やがて呉服だけでなく呉服に関連する髪飾りや履物、帯などを得意先向けに一緒に売り込んだのが百貨店の始まりと言われております。因みに、我が国のモデルやポスターの始まりもここからです。着物に合わせて髪飾りや帯など今でいうセットアップした装いを、小町(町美人)に着せて描かせたのが浮世絵の美人画でした。呉服店は、これをお得意様に配ると共に、店の宣伝に利用していたようです。

 江戸以来の小売店と百貨店という構造に、最初に割り込んだのがダイエーでした。スーパーマーケットの登場です。「主婦の店 ダイエー」として日用品雑貨を低価格が販売しておりました。この仕組みは、大量一括仕入れと卸を通さないメーカ直仕入のしくみで、当時の流通のしくみを大きく変革しました。生鮮食品を扱うようになるのは少し後でした。農協の力が強く、流通革命に至らなかった為と考えます。その手法は、薬のドラッグストアや家電量販店に引き継がれ、町の電気屋さんや薬局が大きくかわりました。一部の電気屋さんは、地域密着を指向して今でも残っていますが、今の薬局は処方箋薬局が殆どで、昔の薬局は見る影もありません。小売店、百貨店、スーパーという三業態の時代も昭和から平成までは主流でしたが、小売店は段々衰退していき市場や商店街も衰退しました。卸の衰退が顕著になるのもこの時期です。

 最後に登場した業態が、コンビニエンスストアです。こちらは、大量一括仕入れのしくみを使いながら、昔の市場や田舎の雑貨屋のように住居の近くで販売するという発想で生まれたと考えます。又、今でこそ新規店舗は人口等のデータから検討して作られますが、最初は生き残りをかけた小売店の業種変えを狙っておりましたので、フランチャイズ制を採用し、法の名残で生き残っていた元米屋、元酒屋さんからの模様替えが多かったと記憶しています。コンビニの登場で、スーパー業界も大きく変化し、ダイエーに代表される大規模店は姿を消し、コンビニ同様地域密着型のスーパーに変わっていきました。今では、地域毎に特色のあるスーパーが住宅街近くに点在する構造になっています。大規模スーパーは短命に終わりました。

 一方で百貨店も苦境に立たされました。百貨店を苦しめたのは専門店の台頭です。生活は豊かになり消費が多様化していくなかで、ブランド品が次々に登場し、多くの専門店が系列をつくり多店舗展開をしていきました。そんな中で専門店をテナントとして抱えこんだショピングセンターが登場し百貨店を追い込んでいきます。百貨店も立地の良い店舗に絞り専門店を取り込むことで対抗していているのが今の状況だと考えています。専門店の中には、メーカ直結という発想を取り入れたユニクロ、ニトリ、無印というような大規模専門店も登場しました。

 この他にも安売り路線を新しい形で継承した百円ショップも登場していますが、あくまでも大規模スーパーの進化系と考えています。やがてはコンビニとの一体化など地域に分散していくようにも思います。小生は、上記のような変遷を踏まえ小売店の形態変更が以下の繰り返しになるのでは?という仮説を持っています。

 地域密着 → 集合化 → 大規模化 → 専門化 → 地域密着

それぞれの業態変更が起きる都度、規制緩和などを伴う流通変革が起きていると見ています。流通変革が業態変更を産んでいるのかもしれませんが、ニワトリとタマゴの関係のように捉えています。この動きと並行しているのが、製販(製造・販売)一体という考え方です。専門化においては強く影響すると考えています。

 今回振り返りをした背景は、ネット販売においても、同じ動きをするように思えるからです。今は楽天やアマゾンに代表されるように集合化の時代と考えています。但し、ネット上では地域が存在しませんので、集合化と大規模化は同時進行となり、次にくるのが専門化と想像しております。ネット上では、消費と生産が情報で繋がり易くなりますので、製販一体の考え方が色濃く出てくると考えます。商品特性によってネット販売の方法論も大きく変わってくるように想像しております。ネットとリアルの融合した小売形態を想像してみるのも一興かと思います。

以上

2021年1月31日 | カテゴリー : 商い, 営業 | 投稿者 : csf-ishii