今回は、マイナポイント制度など、政府が躍起になって推進しているのもかかわらず普及が遅れているマイナンバーカードについて考えてみました。
そもそもマインバーカードについては後付けの話で、本来はマイナンバーについて議論がなされていました。所謂「国民総背番号制」です。その発想は、国民ひとりひとりが持っている所得、税金、住所など行政に関わる様々な個人の情報を一元管理することにありました。きっかけとなったのが住民基本台帳のデジタル化です。住民基本台帳は地方自治体が管理しており、例えば、私が東京世田谷から長崎に引っ越しますとその情報が書き込まれます。但し、原本は現住所のある自治体が管理することになっておりますので、上記の場合でも、住所を長崎に移せば長崎市が管理します。但し、引っ越しはしたが、転出転入などの手続きは行わず、現住所を東京に残したままだと世田谷区が管理します。ここで問題は、それぞれの自治体で導入されている住民基本台帳のITシステムが異なる為、印刷された様式は同じでもコンピュータの中のデジタル情報の形式は異なっています。私を意味するマスタ番号も異なっています。従って、住民が移動する都度、データの再入力が発生していました。そこで、この番号を全国で統一し自治体の管理している情報の形式も合わせて統一して、データ連携をスムーズの行えるようにすることが、そもそもの始まりでした。その後、戸籍は本籍地のある自治体、所得税は税務署、地方税は地方自治体とそれぞれ所轄の官庁や自治体が異なる為、これらの情報を一元管理する為に個人番号を統一しようという議論になりました。
ところが、ITシステムには各省庁の個別最適を求める為、全体最適を図るマイナンバーの検討はなかなか進みませんでした。その上、個人のデータが様々なシステムに分散している為、システム間のデータ連携を図るにはネットワーク速度が課題になっていました。そこで、ICチップにそれぞれのシステムでの個人番号を全て集約して、個人に持ち歩いてもらう形式のICカードでマインバーを管理しようという動きになりました。ある意味、全体見直しをするのではなく便法としてマイナンバーカードの導入が決まったと愚考しております。この段階で各自治体が発行していた住民カードはマイナンバーカードに統合されました。
一方でIT技術、特に、インターネット普及によるネットワーク分野の技術革新が飛躍的に進展した上、セキュリティ面でもICチップの情報を守ることが難しいと判断されるようになりました。その為、マイナンバーカードは本来の目的であった個人番号の一元管理を行うカードではなく、単に、顔認証や暗証番号による本人確認をする為のカードとなり、本人情報は、都度ネットワークを通して各ITシステムにアクセスして情報を得るものに変容しました。ここに至り、カードではなくマイナンバーの検討は宙づり状態になったと愚考しております。私見としては、新しいIT環境に合わせた形でのマイナンバーの再検討を行うべきと考えています。
しかしながら、動き出した施策は止まらないもので、運転免許証や健康保険証などこれまで発行されているカード類との統合が図られています。但し、上記のように、免許証や保険証に記載されている情報、免許証でいえば運転免許の種類、事故履歴によるゴールドなどの種別、保険証でいえば被保険者保険者番号などはICチップには格納されません。そこで課題となるのは、都度、ネットワークにアクセスする必要があり、その為のしくみづくりも必要となることです。保険証については医療機関、薬局などでのICカード読取端末や電子カルテなどの改修費用に対して補助が出ることになっていますが、従来の保険証も発行されますので、マイナンバーを使うか保険証を使うかは患者様次第となり、医療機関や薬局の現場では混乱が予想されます。
カードである以上、普及率が最大の課題でありますので、政府もマイナポイント贈呈やマイナポータル、確定申告などの電子申請などを謳い文句に普及を図っておりますが、肝心の既存システムの改修との整合性がとれていないように思えます。国民も全員が切り替える必要性を感じていないのではないでしょうか?
縦割り行政打破をうたう現政権には、マイナンバーカードではなく原点に返ってマイナンバーによる行政システム改革を期待しています。
以上