今回は、前回に引き続きリスクマネシメントのお話しをします。最近増えてきているアマゾンやグーグルなどのネット販売では、個人が海外企業と販売契約をしています。海外では「at your own risk」が前提となっていますので、基本的に使用者責任とする条文が並びます。例えば、最新バーションにアップデイトしていない場合の保証はしない。加えて、使用中のバーションが最新バージョンであるかどうかを知ることも使用者の義務となっています。本来、使用者の責任で行わなくてはならないバージョン管理を代行するソフトが販売されていますが、自分で管理するなら無償、便利ツールは有償という考え方です。勿論、ツールも使用者責任ですから、ツールのバージョン管理は?というイタチごっこに陥ります。そこで、自動更新という手段を使うことになります。いずれにしても、よく考えないといけません。一昔前のオフコン時代までは全てメーカ責任でしたが、これは、日本独特の文化だったと、インターネットの波を経験して知りました。海外メーカとの販売契約においては、購入者自身の使用者責任についての条文が、とても重要で量も多いです。
1)欧米の常識である「at your own risk」とは?
「いやなら買うな」「使う技術が無いなら使うな」つまり、使用者責任を契約の前提とすることです。一方で、商品には取扱説明書などを必ず添付して、使用者責任の範囲を明確にさせる責任が、製造者責任として規定されています。リコールの多くは、使用者責任をたてにとって、説明不足や虚偽仕様等の製造者責任を追及するものです。とはいうものの、欧米の製造者責任は、使用者責任ありきで規定されていることを認識して下さい。又、全ての疑義は裁判所判断に委ねられます。特にアメリカでは、この傾向が極端で、使用者として、実際に使っていなくても、誰でも弁護士を使って係争に持ち込めます。弁護士が巷に溢れている理由のひとつです。取扱説明書などをチェックし、リコール裁判だけで食っている人も居るようです。
2)遊泳禁止に見る社会モラルとしての「at your own risk」
日本では遊泳について、許された地区と遊泳禁止地区がある上、遊泳禁止地区での事故についても、遊泳禁止を通知する看板の位置や禁止を徹底させるしくみなどが、話題となり行政責任なども追及されます。海外ではプライベートビーチ以外の全ての海岸にサメや潮流についての表示と必ず一緒に「at your own risk」表示が最後にあり、遊泳禁止地区はありません。全ての事故は自己責任、救助などの費用は、全額個人負担(受益者負担)が基本です。お上に可否を決めさせて、それに従順に従うという我が国独特の国民性と、全て基本は自己責任、お上は干渉するなという欧米の国民性との違いをよく認識しておいて下さい。
3)IT業界での「at your own risk」
IT及びインターネット(IOT含む)の世界は、全て「at your own risk」です。日本では、そこまで明記しておりませんが、海外製品を販売する時には、お客様に、よく説明しておく方が無難です。少し前までは、銀行に代表される大規模なシステムトラブルが発生すると、担当メーカ名が公表されることが多かったですが、最近はあまりメーカ名が出なくなったと思いませんか?小生の記憶では、東京証券取引所のトラブルが分水嶺になっていたように感じます。これは、主にマイクロソフト、グーグル、オラクルなどの米国メーカが、トラブル時でのメーカ公表を断固許さないからです。セキュリティに関しても全く同様です。こちらも我が国には、曖昧な議論が多いと愚考しております。殆どのセキュリティソフトが海外製ですから「at your own risk」で作成されていることを充分認識出来ていないからだ、と愚考しております。日本国のお客様の中には上記を正しく理解出来ず、未だにベンダー任せのお客様も多いです。本来使用者責任である筈の、お客様によるICT関連業務を肩代わりしたり、指導したりするサービスを充実させて、サポート業務をICT分野での付加価値ビジネスとして推進しているベンダーさんもおられます。以前は、製品サポートの有償化をお客様に理解して頂くことが難しかったのですが、最近は、少しずつ理解が広がってきたと感じています。
以上を踏まえ、契約条項は読み飛ばすことが多い傾向も見受けられますが、最低でも契約書の使用者責任に関する条文だけでも読むことをお勧めします。当事者を甲や乙となぞらえ、独特の言い回しで難解に感じるかと思いますが、文法に慣れれば意味は理解できるようになります。又、営業職の方は、お客様との契約においては、契約内容をよく理解して契約や作業にあたる必要があります。「営業が売り込む際に条件をつけるな」的な日本独特の不文律文化が残っていますが、そこを上手くお客様に説明することも営業の必須スキルと心得て欲しいものです。
リスクマネジメントにおける日頃の訓練としては、契約や本稼働に向けて失注や納期遅延に繋がるリスクを出来るだけ多く洗い出す事です。又、不調になった場合には、リスク想定項目として、足りなかった項目の数を検証して下さい。内容ではなく数です。日常業務の中でリスクをいくつ洗い出せるかが訓練のカギになります。因みに、リスクマネジメント理論では、若干のバラツキはありますが、1案件に対する想定リスク数は、初級で10個、達人で100個といわれています。
以上