今回は、前回の医療法人に続き、医療法人の経営の特異性についてお話します。医療法人では、経営における販売(マーケティング)戦略立案が単独で実施するのが難しいことが、一般法人との最大の相違点と考えます。
短期の企業経営とは、強引に要約しますと「人・物・金の経営資源を使って、最大の収益を上げること」になります。いうまでもなく、企業とお客様とを繋ぐものは商品ですから、商品戦略は販売戦略の要となります。商品戦略のバイブルとして定着しているコトラー博士が研究した4P理論(4Pを最初に定義した人はコトラーではありません)では、以下の4つのPでマーケティング戦略を考えることにしています。
Product(製品)、Price(価格)、Promotion(宣伝)、Place(立地、流通)
この4Pの中でも、価格は最も重要で判り易い要素ですが、この価格が医療法人の場合、自分で決められません。これを決めるのは、国であり、診療報酬点数となります。点数とは、診療行為を積上げで計算し易くしたもので、1点が10円に換算されます。大きくは二年に一度の間隔で医療費改訂がなされます。これは、診療や検査などの医療行為に国が定価を定めるものです。このしくみは、国民皆保険制度をとっている我が国特有のものです。医療機関で受診しますと、診療内容とその点数が記載されたレセプト、というものを受け取ることが出来ます。診療報酬を計算する為の診療行為ごとの単価が国によって決められています。従って、レセプトによる請求のしくみそのものは、コンビニ等のPOSのしくみと同等ですが、肝心の価格表が自由に決められないという課題を内包しています。又、宣伝活動も大幅に制限されており、テレビコマーシャルなども自由には行えません。
企業経営の要略として「「入る」を図って、「出ずる」を制す」という言葉がありますが、この「入る」を自ら図れず、国の政策という大きな足かせをはめて経営しないといけないのが医療法人の経営です。
加えて、経営資源である「人」「物」「金」の「人」についても、病床数を基準とした看護師や医師の数に関する規定があり、決められた人数を確保することが義務付けられております。更に、診療科の数や救急患者の受け入れなど病院の機能についても、細かな規定が定められており、その病院機能からも人数に対する制限が設けられています。義務付けられた必要人員を確保する為に、経営を圧迫したとしても報酬を高く設定せざるを得ない現実があります。
おまけに、病院の職員は、医師、看護師、薬剤師、検査技師など国家資格が必要な職種が殆どです。産業別将来就業者を想定して、大学や専門学校の定員数は、国が調整しています。ところが、こちらはご存じのように文科省の領分です。医療制度の根幹である点数と必要人員を決める厚労省とは、別の組織で動いておりますので、どうしても方針の違いや時間差が生じて、医療現場での慢性的人不足という現在のような矛盾が生じています。
以上のように、医療法人の経営は一般の会社とは異なり、国によって様々に規定されています。加えて、これが2年毎に改訂されますので、その都度、医療法人では経営方針を見直すことが半ば義務化されていると愚考致します。
通常のICT商談では、経営に資することが最重要とされています。経営者への営業活動が重視されており、小生自身もそれを実践してきましたが、以上のように、一般的な経営知識で対応出来ないのが医療関係商談の特徴、と理解するに至りました。
又、国は、高齢化に伴う医療費負担の軽減を図るべく、地域医療体制の確立を推進しています。これは、各病院が競って患者サービスを行うのではなく、地域毎に専門医と在宅医の連携で患者を診るしくみを設け、そこに看護師や介護も含めた、患者の健康に関する総合的な関与により、基本的には、患者が自宅で生涯を全うできる仕組みを目指しています。これを実現する為の情報インフラである地域ネットワークへの参加も義務付けられており、この地域インフラに関するICT費用は、各施設が負担することになっています。最初の構築費用は補助金などで軽減化が図られていますが、構築以降の運用費用や、自社システムとの連携費用は、施設負担です。
医療介護分野のICTシステム・サービスの販売においては、上記のように競争各社共に、国の方針に引きずられる為、経営面のアプローチでの優劣は簡単には付きません。その分、現場アプローチが必須であり、その根幹は業務効率化に尽きると考えております。同一のITシステムを使っていても、お客様毎に業務のしくみは異なりますので、業務適用に向けて、コンサル的業務改善並びに現場指導を行う手法やお客様向け教育などを充実させて、個々のお客様の実情に合わせた業務効率化を的確に提案することが肝要と考えます。
以上