販売予算について 営業雑感No.62

 今回は、個別商談管理型の会社を例に予算作成のしくみについて解説します。会社の予算には二つの数字が存在します。一つがノルマで、もう一つは商談売上金額の積上です。ノルマは基本的に経営観点から主に前年比で算出されます。商談売上金額積上額(以下、商談積上と略します)は、商談毎に受注確度を付けて現場で積上げられます。確度の評価は、各社マチマチですが、一般的にはA(ほぼ確定)B(有利)C(五分五分)D(不利)となっています。小生は、Dランクは予算商談としては評価せず、商談積上としてはCランク以上で考える方法をとっています。その理由は、手持ち商談として、予算商談とは別にDランク商談を管理したいからです。

 商談積上で出来上った予算精度(達成予想)の評価方法については、各社でマチマチですが、今回は一般的な予算精度の評価についてお話しします。ノルマと商談売上積上で金額差が出た場合は、ノルマは変更できませんので、Cランク商談の総額を増額したり、減額したりして調整します。従って、Ⅽランク商談の見極めが重要になります。

予算精度評価要素1 昨年度予算達成状況からみた実力。

 予算達成率は、業界全体の動向や他社状況にも影響されますので、昨年実績で自社の営業力を評価します。実力が高い場合は、Ⅽランク商談であっても受注確度は高まりますので、予算精度は上がります。

予算精度評価要素1 予算に占めるCランク商談の割合。

一般的には、ランク別商談割合は毎年変わらないことが多いのですが、Cランク商談の割合が例年より多い場合は、予算精度は下がります。逆に、Ⅽランク商談の割合が減っても、組織というのは総額での実力があり、予算達成した場合は、ほぼ全力で運営されていますので、増員でもない限り、予算精度が極端に上がることはありません。

 最終的には、商談積上の予算精度を評価した上で、ノルマと考え合わせ予算を決定します。営業予算未達は、そのまま経営に直結しますので、予算精度が低い場合は、前年比をバースとしているノルマを見直す必要が出てきます。ノルマ必達と予算達成のどちらを重視するかの二者択一問題は、会社が置かれている環境にも左右されますので、どちらが正解というものでありません。どちらも選んでも構いません。本当の課題は、それぞれを選択した際に最大のリスクとして何を認識し、リスク対策を本年度施策にどう盛り込むかにあります。

・ノルマを重視した場合

最大のリスク  予算達成が出来ない。

対策      昨年と異なる施策を考える。

 この場合、当然、昨年の反省を踏まえることになりますが、昨年と同じ施策で反省点を踏まえて再実施出来るのは、昨年施策が今年の種蒔きとして機能している時だけです。例えば、昨年施策で商談化は10件でしたが、結論が今期に持ち越されたなどの場合です。そのような結果が出ていない限り、反省を踏まえても同じ施策ではダメだということを強く認識して下さい。又、担当を変えてやり直しというのも見かけますが、責任者(管理職)を変える以外は、マネジメント放棄と愚考しており、決して好ましいものではありません。

・予算達成を重視した場合

最大のリスク  全社ノルマを達成出来ない。

対策      他部門と全社ノルマ達成に向けた協議を行う。

 この場合、自部門が予算達成を優先した為に、全社ではノルマ未達が発生します。その不足額を他部門がノルマを上回る予算増額をして吸収しない限り、全社ノルマは未達となります。従って、他部門との協議が予算決定者にとって重要な仕事になります。組織の管理職というのは、常に全社の状況を考えて自部門を管理するものであり自部門だけが良ければそれでいいというものでは、決してありません。

 さて、本来、この販売予算というものは、何の為に必要なのでしょうか?以前に経営とは「入りを量って、出るを制す」という言葉をお話ししましたが、販売予算とは、まさに入りを量っており、出るを制する為に必要となります。交際費、会議費、旅費・交通費、通信費などの経費予算は販売予算から逆算して決められている会社が多いものです。従って、販売予算は、経費予算に直結しているといっても過言ではありません。加えて、経費を使用する時期は、必ずしも売上と連動するものではありませんし毎月固定的にも出ていきます。先行して経費を使い過ぎて、後で販売予算未達では、忽ち赤字経営となってしまいます。加えて、経費に占める割合の最も多額のものが労務費ですから、販売予算は皆さんの給与にも直結しています。

 少し、横道にそれますが、経費予算の使い方についても解説をしておきます。よく、メーカなどで期末に近づくにつれ出張自粛や経費カットなどが実施されるのは、売上予算未達を見越して予算利益を確保するための施策です。最悪なのが経費予算を使いきる為に、期末に集中的に使うものです。今期の販売予算達成状況が危ういなかでの判断については、販売予算を重視して使わない場合と敢えて使う場合が考えられます。この判断もリスク判断が鍵になります。

・今期購入すると判断する場合

最大リスク 全社で赤字が出る。

対策    全社の状況を確認する。

販売予算作成のときと同じく予算は自部門だけが良ければよいというものではなく、常に全社を意識する必要があります。全社損益を把握し、全社損益に大きく影響しないのであれば購入すべきと考えます。全社損益に影響しないと判った段階では、販売予算と経費予算は切り分けて考えてよく、経費予算として計上していた物は購入して問題無となります。

・来期購入すると判断する場合

最大リスク 当初計画していた投資効果が得られない。(老朽化代替えによる効率化など)

対策    投資効果を得る為の代替策の立案。

 プロジェクトへの影響やお客様への影響を考慮し、代替策を立案することが必須です。特に、お客様への影響では賠償問題にも発展する可能性がある為、慎重に検討することが、  重要です。尚、効率化等のメリット放棄のマイナス効果を算定することは、来期購入と決めた段階で検討しても無駄な作業です。よく陥る落とし穴ですが、現状と代替策との比較が  が必要であり代替策が無ければ始まりません。もし代替策が無い場合は、購入するしかなく全社損益を確認することになります。代替策が無い場合に、運を天に任せて、現状のままとすることは、マネジメント放棄以外の何物でもないと考えます。

 予算のしくみをお話ししましたが、予算について理解して頂きたいのは、以下の二つです。

1)常に、全社予算との関連で部門予算を把握する。

2)予算達成や購入見送りなどの判断に向けては、昨年状況や予想される影響等を極めて現実的に把握して回避策を立案する。「極めて現実的」とは、最大リスクに絞って、課題を数値化して検討することです。

 販売予算は企業経営に直結しているものであり、経費予算の最大のものは労務費ですから、皆さんの給料(生活)にも直結しているということを自覚し、社員全員が販売予算達成に向け努力することが重要と考えます。

以上