今回は、皆さんの給料が決まるしくみをお話しします。皆さん、自分の給料が基本給や職種給・各種手当などで決まっていることはご存知だと思いますが、企業経営において、どのような手順で決まっているのかをご存知の方は少ないと思います。企業においては、給料は、一つの方式でしか決まりません。
先ず、給料と労務費の関係をご説明します。労務費とは、全従業員の給与総支給額に賞与と退職金積立金・法定福利費等を足したものです。法定福利費とは、厚生年金・失業保険・健康保険の会社負担分が主です。皆さんの給料から上記保険類は控除されていると思いますが、実際には、保険金額は個人負担分と会社負担分に分かれています。50%会社負担が一般的で、会社負担分保険料が法定福利費となります。尚、会社負担の割合は経営陣で決めますので全て個人負担の会社もあれば、全額会社負担も稀にあります。吉本興業には無いようですが、雇用契約には明記されていますので、確認しておくことをお勧めします。
横道にそれましたが、労務費とは給与が主たる構成要素ですが、全てではありません。経営では、給料支給額を決める前に、労務費予算を以下の式で決めます。
労務費 = 付加価値額 × 労働分配率
付加価値額は、これまでお話をしてきましたように、単純にいえば、売上高から外に出るお金(材料費・外注費・仕入れなど)を除いたものです。企業活動で得た付加価値の内、いくらを人財に廻すか?を決めたものが労働分配率です。一般的に、製造業のように施設・設備の多い業種では率は低く、サービス業や小売業のように人異存の高い業種では率は高くなります。以上の計算式から経営資源としての労務費を経営陣が決めます。
付加価値額に応じて労務費総額を決め、従業員数で割れば給料は決まります。しかしながら、従業員にとって給料は生活費であるということを考えると安定的に支給する必要があり、上記とは別に、以下のような手順で計算した給料をベースとしたもう一つの労務費が計算されます。
・雇用の関係から、新人の初任給を決めます。
・定期昇給を加味して、社歴別の給与テーブルを作成します。
(余談ですが、最近は成果主義を掲げて、定期昇給(ベア)をしない会社も多くなっています。定期昇給が有るか?否か?で、企業の従業員長期雇用に対する姿勢も判断出来ます。長期雇用を目指している会社には殆どの場合、定期昇給があります。)
・各種手当、補助を決めます。
・各種保険額テーブルから個人負担額、会社負担額を決めます。
以上で、社歴別の給与テーブルが出来上がりますので、従業員構成に給与テーブルを当てはめて給与総支給額を計算します。これに、賞与と退職金積立金・法定福利費などを加えて、いわば生活費観点からの労務費が決まります。
最終的に、労働分配率で計算された経営観点からに労務費と生活費観点から計算された労務費を見比べて、分配率を見直して原資を増やしたり、定期昇給、各種手当などを見直したりして最終的な給料が決められます。春闘でベア回答が論点になっていますが、組合側が生活費観点からのベアを要求し、経営側は労働分配率との関係で判断したベアで回答し、議論をしていると大筋でご理解下さい。但し、春闘の生活費観点とは物価上昇や同業他社との比較などから基準年齢(組合員平均年齢が採用されるケースが多い)で計算されていますので、前述の生活費観点労務費とは若干異なります。尤も、ベアの無い会社も増えてきていますので春闘の存在意義が薄らいでいると考えています。
上記は、一般企業の場合ですが、公務員は、一般企業の給与水準ベースに準じて決められています。この公務員給料の妥当性を判断しているのが人事院であり、その年の基準が人事院勧告となっています。本来は、税収をベースとして労働分配率を決めたものと比較して議会で協議すべきなのですが、人事院勧告の労務費ありきで税支出が決められているのが現状でしょう。尚、医療機関では一般企業と同じ決定の仕組みですが、売上の大半が保険機構であり、その基準も国が規定していますので、どちらかというと生活費観点、特に他医療機関との比較で決められるケースが多いようです。又、医師や看護師、薬剤師など国家資格を持つ方については、腕次第で報酬は決められる場合も多いと考えて下さい。
以上が、給料を決めるしくみです。給料を上げるには労務費を増やす必要があり、その為には、付加価値額を増やすことと、労働分配率を上げることとの二方向で検討することは理解して頂けたと思います。又、付加価値額を増やす為にも売上を増やすことと、仕入原価を下げることの二方向の方策があります。一般的に企業は必ず成長戦略をとりますので、売上を増やすことが優先されています。ところが、売上が上がっても仕入額により付加価値額は変動しますので、労働分配率が前年並みとしても売上増と労務費を上げることとの因果関係が見えにくく、皆さんの日常活動の中でよく見える売上増が労務費UP(給与UP)に繋がらないケースも出てきます。「売上がこんなに上がっているのに給料が全然増えない」という不満の殆どの原因は、売上高が増えても付加価値額が増えていない為、労働分配率が同じでも労務費が増やせない状況です。一般的に労働分配率は毎年殆ど一定です。売上と給与の関係が連動しない理由は付加価値に起因しています。売上や経常利益などの業績関連数字は、決算報告書で直ぐに判りますが、付加価値額と労働分配率は計算して導きだす必要が、あります。株式会社では決算報告書は公開されていますので、試しに計算してみて下さい。
付加価値経営をされている企業はまだ少ないですが、日常の営業活動や生産活動の中で付加価値が見えるしくみは、付加価値増と従業員の報酬増を関連づけしやすいので、会社全体のモラルアップに繋げやすい経営方式と愚考しています。
以上