虚業 営業雑感No.50

 これまで、小生は実業に関することを書いてきました。しかしながら、今の経済に強く影響を持っているのは虚業です。今回は、この虚業に関する私見を述べさせていただきます。辞書によりますと「実業 農業・水産業・工業・商業などのように、生産・製造・売買に関する事業」「虚業 投機的な堅実でない事業。大衆をだますうさんくさい事業」とあります。では、銀行などの金融機関や保険会社、証券会社などは、どちらに分類されるのでしょう。勿論、虚業ではないのですが、上記定義では、実業にも当てはまりません。小生は、虚業を「金が金を産む事業」と考えています。つまり、本来、貨幣とは、物々交換に変わる信用価値として産み出されたものです。従って、実体を伴わない価値であり、実体のない価値が更に実態のない価値を産むという構造が虚業だと考えています。従って、産業名で分類できるわけではなく、事業の中身で定義されると考えています。虚業で設けた金を実業に投資している企業もありますし、税金を虚業に使っている国もあります。金融機関の中に、実業より虚業に重きをおく傾向が生まれ混迷しているのが現在だと思います。

 虚業の歴史は古く、日本でも米相場などといわれるように相場という概念が発達しており、欧米よりも進んでいいたかもしれません。但し、虚業が実業を上回ることはありませんでした。何故なら、貨幣が兌換貨幣であり、最初は、金貨・銀貨などでしたから貨幣そのものに鉱物価値がありました。その後、紙幣が考案されたときにも金や銀と交換出来ることを紙幣発行国が補償しておりました。金をベースとした貨幣経済が金本位、銀をベースとしたものが銀本位です。余談ですが、第一次産業革命を制した英国は銀本位、第二次産業革命を制した米国が金本位です。江戸時代までの我が国は、大阪中心の地域が銀本位、江戸中心の地域が金本位と二つのベースを持つ珍しい存在でした。第二次大戦後は、ドルを基軸通貨として各国紙幣はドル換算された金本位を維持してきました。各国は、発行紙幣に相当する金を準備しておくか?ドルを保有するしくみです。ドルの代わりに米国国債を保有することも一般的でした。ところが、世界経済の規模拡大につれて、肝心の米国の金保有が不足したことにより、ニクソンショックといわれるドル紙幣の金兌換が中止されました。その後、様々な経緯のあと、現在の変動相場制といわれる各国貨幣価値が相対的に決まるしくみになりました。この動きにより、貨幣価値の上限としてあった金や銀の保有量の枠が外れ、ほぼ無制限になっています。これに輪をかけているのが仮想通貨です。もろもろの思惑はありますが、虚業が実業からどんどんかけ離れていっているのが現実だと愚考しています。

 更に、追い打ちをかけたのが、会社を商品とする制度の確立です。つまり、今の株式市場は、従来の投資先を会社が求めるものではなく、企業を売り買いする場に変容しています。企業の価格が時価総額(発行株式数×株価)であり、株価の上下で企業価格が変化し、企業価値が決まるようなしくみになっています。又、株主は企業の業績に投資をするのではなく、株価の上下に投資するように変化しました。つまり、会社の価格を決めるゲームに参加しているだけになっています。小生は、今の株価は会社の実業の業績に連動しておらず、虚業含めた収益に連動しており、虚業で儲けている企業も多いのが実態だと思います。日本において、この株式ゲームに向けて法整備をしたのは小泉政権の時代で、米国の虚業株主含めた市場主義を容認(助長?)する仕組みを国際標準と規制緩和の名目で法整備がなされました。当時から米国標準は国際標準ではないという経済学者や政治家もおられましたが、小泉人気の基に一蹴されました。この流れは、そのまま現在に続いており、実感の伴わない経済成長の背景は、まさにこの仕組みよるものと理解しています。現政権は、更に、それを拡大させており、虚業経済という、これまでに人類の経験したことのない時代が到来しています。

 尚、小生は、インターネットビジネスやゲームビジネスの全てが虚業であるかのような風潮には反対で、サービスという目に見えない価値が実業として生まれているとうスタンスをとっています。小生の用いる付加価値とは、貨幣価値に対比するものと考えており、実業を支えるものと位置づけております。貨幣価値だけの一人歩きが虚業であり、残念なことに長者番付に取り上げられる多くの方は、実業家ではなく虚業家だと思います。特に、ビルゲイツ含め米国のIT産業TOPは、個人収益の殆どが虚業によるもので、実業からの報酬は少ないとみています。我が国でも有名タレントと付き合っている方が、自分は実業報酬で稼いでいる訳でないことを明言されていましたように、虚業家が増えてきています。又、金が金を産む仕組みである為、貧富の差を益々拡大させます。経済とは、経世在民の略であり、世の中を治めるものなのですが、虚業家がそれをも破壊しているように愚考しております。

小生の指導テーマは実業回帰であり、実業家のお手伝いに限定しています。

以上

2019年6月9日 | カテゴリー : 閑話休題 | 投稿者 : csf-ishii