商品を育てる 営業雑感No.49

 今回は、マーケティングに関連して、ヒット商品を育てるしくみについて私見を纏めました。ヒット商品は、誰かのアイデアでいきなり生まれるものは少なく、大事に育てあげられたものが多いです。朝ドラでも放送されました「チキンラーメンの生まれるまで」の話などが有名です。小生持論は、商品を子供に見立てて、商品を育てるにも両親が要るとしています。母親にあたるのが開発者で、父親は営業(お客様)と愚考しております。

・母親(開発者)に求められる資質

 商品は、自ら作ったものですから商品を愛し、とにかく自信を持って説明出来ることが必要です。勿論、競合には絶対に負けない理論武装も必要です。又、チームで作成した商品では、開発メンバー全員が自信を持っていることが理想ですが、最低でもリーダは絶対的な自信を持っていることが必須です。上からの指示どおりに作った商品や、自分の本意では無く作った商品などは、開発者には自信を持つ根拠がなく、母親の居ない商品となりヒット商品となることは、時のいたずらが無い限り極めて稀です。

・父親(営業)に求められる資質

 商品を信頼することは必要ですが、それ以上に、お客様に絶対に役に立つと確信できる提案をすることが必須です。逆にいうなら、提案に自信が持てるまで母親(開発者)と徹底的に議論をする必要があります。その為には、お客様の業務に精通し、業務に則した改善点を明確にするスキルが求められます。

 実際には、開発者、営業共に組織として仕事をしているだけで、上記のような思い入れのある方が居ない、ベンチャーに代表されるように母親しか居ない等、両親の揃わないケースが多いのも事実です。先ずは、両親を明確にすることがヒット商品創出の第一歩と考えます。両親(開発者と営業)一体となって、以下の手順で商品を育てることが商品戦略の基本と考えます。

1)ターゲット市場の絞り込み

 よくあるのは、母親が「この商品は、どこにでも適用できる」と過信することです。例えば、人事給与システムでも、業種・規模によって、パートが多かったり、勤務時間のバリエーションが沢山あったりと、システム要件は異なります。従って、先ずは、特定市場での要件に、完璧に答えるシステムとして商品化することが必要です。因みに「何でも出来ます」は、「何も出来ません」と同義と愚考しております。それより「この分野はお任せ下さい」を目指すべきです。多数決のような最大公約数的アプローチではなく、最小公倍数アプローチが必要です。余談ですが、最大公約数では全員の不満が少なくなるだけで、だれもが不満を持っていることになりますので、最小公倍数のように誰かが必ず満足することが必要と考えます。

2)モデルユーザの獲得

 システムは運用によって、その機能も限定されますので、実際にユーザに使って頂いて、評価をする必要があります。余談になりますが、富士通の或る経営者の口癖は「当社は、半完成品を販売している。お客様に納入して使って頂いて初めて完成品となる。」というものでした。小生、若い頃に、直接指導して頂く機会に恵まれましたが「工場での出荷検査は運用環境を想定して行う検査であり、最終検査はお客様で行っているのが現状です。従って、現地調整での営業の役割は、とても重要です。」と仰っていたのが、今も耳に残っています。当時は汎用機の時代であり、今とは環境は異なりますが、商品は、お客様に使って頂いてはじめて価値を産むという考え方は、今も同じと愚考しております。従って、商品化にあたっては、その商品をとことん気に入って頂けるお客様を獲得することが必須です。

3)ニッチチャンピオンの獲得

 モデルユーザの属する市場を、業種・業務・地域・お客様規模などで市場を分割し、とにかく第一位(TOPシェア)を獲得出来る市場を限定することです。尚、小生定義では、TOPを獲っていても市場占有率が30%未満ではTOPシェアと考えません。シェア30%を基準としている理由は顧客の評判による、派生的な顧客の拡がりです。30%を超えればお客様同士の会話の中で、自然とその商品名が多く出るようになり新規顧客を獲り易くなりますし、お客様紹介も増えてきます。人は人気に弱いものです。

 尚、最初から市場を拡げますと、様々なお客様からの要望を集約するのが難しくなり、 結果、商談毎にカストマイズを繰り返すこととなり、商品の実体が見えにくくなります。 加えて、要望数が多いとどうしても多数決の論理でものを決めますので、最大公約数的な標準仕様となり、先に話しましたように、お客様全員が何等かの不満を抱えるということになりかねません。ニッチを狙うということは、最小公倍数の考え方で、誰かが必ず満足を得ている状況をつくることを意味します。ターゲットを絞ることにより、モデルユーザ獲得からの商品特長の一貫性が担保され、ニッチチャンピオンを狙い易くなります。

4)強みの整理

  ニッチチャンピオン獲得の過程で、競合との比較での強みを明確にします。ここでは 弱みを見ないことが重要です。強みを延ばすことで、弱みはカバーできるように思いがちですが、弱みへの対策は、ややもすると後ろ向きの作業となり、関係者のモチベーションも上がりませんし、弱み克服は競合次第のイタチごっこであり、競合と平均的に戦える特色のない商品となるだけです。皆さんがご存知のヒット商品を思い浮かべて下さい。必ず、他商品に際立つ優位性を持つ特色がある筈です。「得意分野をより伸ばす」これが差別化の決め手と考えます。

5)次なるターゲット市場の選定

 最初にチャンピオンとなった市場の隣の市場を狙うことがセオリーです。同一業種での規模拡大、隣の地域の市場、関連性の高い業種などを隣の市場と位置付けています。

 以降は、2項~5項を繰り返していくことになります。このようにしてヒット商品は、育てられるというのが、小生持論です。自社商品(サービス商品含む)の両親を一度考えてみて下さい。直ぐに思い浮かぶ商品があれば前途有望です。

以上