品質は現場にあり 営業雑感No.43

 しばらくお付き合い頂いた「ものづくりシリーズ」の最終号です。品質保証の源は現場にあります。実は、「品質は現場で創り込む」という言葉が、小生の指導テーマです。小生の指導方式であるQCDをベースにした業務改革・改善では、大目標が付加価値品質であり、その為の評価基準をクイックレスポンスとしています。この手法は、ものづくり企業以外でも応用が可能ですが、業務理解がその前提となります。

 品質を保証する為の基本は検査であると前回お話ししましたが、検査効率を上げる(品質コストを下げる)ことの究極は、検査をしなくてもよくすることです。品質を構成する要素は、実は、部品品質と作業品質の二つしかありません。この二つが確実であれば、製品検査は最小限でよくなる筈です。この二つは、現場で検証できますので「品質は現場にあり」としています。

 部品品質については、受入検査もさることながら、標準部品でお話ししましたように繰り返し利用することが、一番有効な方法です。従って、標準部品を徹底して進めることになります。しかしながら、作業品質については、現場の作業者次第ですので、部品と同じく標準化の考えで作業標準を定めることになりますが、それ以上に大きいのが、作業者のモラルです。一流の職人(マエストロ)は、皆さん全員、自分の仕事に拘りを持っておられます。この自分の仕事に対する拘りこそが、プロ意識であり職業人モラルと考えます。

 現場でのモラル育成の第一歩が時間厳守です。時間厳守といっても、工場のように団体行動を基本とする組織と、設計のように個人行動を基本とする組織では、少し考え方が異なっており、団体行動をする組織においては作業スケジュールが基本となり、始業から終業までメリハリのある時間運営がなされます。始業の代表が朝礼です。個人行動をとる組織については、納期厳守だけと考えて頂いても結構ですが、個人行動を全面的に肯定した組織は、まだ少なく働き方改革のテーマと考えます。小生が、クイックレスポンスを重視することの背景は、この時間厳守によるモラル向上です。

 次にくるのが整理整頓です。整理整頓については、いうまでもないと思いますが、仕事の環境を整えることは、イージーミスを防ぐのにとても重要です。部品をつけ忘れたり、間違ったりすることは、基本、作業机の整理整頓で大幅に減少します。工場見学の際、作業机の上や通路など、整理整頓の行き届いている工場は、必ず品質管理がシッカリしています。

 最後に習慣化です。指差し確認や点呼など、決まった動作を入れることで習慣化がし易くなり、モレや忘れが少なくなります。家を出る前に持ち物を口で唱えて忘れ物を防いだり、前日寝る前に、翌日のスケジュールを確認して、起床時間と出勤後の作業手順を確認しておくなど、日常生活の中でも習慣化は活用できます。

 サービス業でも作業標準で品質を担保しておられます。一つは、マクドナルドで接客マニュアルをアルバイトの方全員に徹底しておられます。生憎と小生の青春時代にはマクドナルドは無く、バイトしたことがありませんので、聞いた話で恐縮ですが、笑顔・声出し応対は勿論ですが、三秒ルールという面白いものがあります。お客様から注文を頂いてから、一拍おいた後、三秒以内に「ポテトは如何ですか?」と追加の注文を聞くというものです。三秒がミソで、このタイミングで聞かれるとついつい追加注文をするお客様が多いのだそうです。しかも、暗示的な効果もあり、お客様は追加注文したことに満足を覚え、後悔しないそうです。サービス業においては、顧客満足こそが品質尺度になりますので、その点でも極めて有効な手法です。しかしながら、この手法は、対面販売による現物決済が主体のビジネスでは成り立ちますが、それ以外のサービス業では、そう単純にはいきません。ここに一工夫をしている会社が、オリエンタルランド(ディズニーランド運営会社)です。ここでは「誇りを持って接客出来る」ように、社員及びアルバイトの方に企業理念教育を徹底しておられます。ディズニーランドで仕事をしたいという方だけを集め、更に、企業理念に基づくお客様に対する接客姿勢を自ら考えさせるというしくみです。人気企業だけに出来ることと言えばそれまでですが、開設当初からの本施策によりリピート客を増やして現在があると愚考しております。

 「品質を現場で創り込む」ための行動規範は、以下の二つです。

① 事象発生の根本原因を追究する。

② 同じ事象が二度と起こらないように恒久的対策をうつ。

 ひと昔前に、製造業コンサル仲間で流行っていた逸話をお話しします。多少の誇張はありますので、ご承知おき下さい。

課題となる事象  工場の通路に一枚の紙切れが落ちていた。

松下電器様(現パナソニック様)の場合

 事象への対処  直ぐに紙切れを拾い捨てる。

 今後への対策  犯人探しをして、厳重注意を行う。犯人不明の場合は、工場内全員に注意を促す。

ソニー様の場合

 事象への対処  直ぐに紙切れを拾い、その通路の担当部署に渡す。

 今後への対策  その部署の責任者に通知はするが、その後は部署任せ。

トヨタ様の場合

 事象への対処  紙切れをその場に固定し、廻りもそのままとする。

 今後への対策

・見つけた人が紙切れの内容を確認し、その内容に関係する全部署の代表を直ちに集める。

・内容の価値(不要なものか?抜けではないか?)を判断し、その伝達ルートを特定する。

・伝達ルート中で、どこで落ちたか?何故、気づかないか?等の原因を徹底的に追求する。

・原因につき、恒久的な対策(見える化)を決めて実施する。

 当時、この逸話は、優良企業での三タイプの事象対処法として紹介していました。

 松下電器様型  即改善・属人対応

 ソニー様型   即対処・組織対応

 トヨタ様型   現場保存・原因徹底解明対応

 当時は、それぞれ一長一短と話しておりましたが、その後の各企業の状況を鑑みますと、トヨタ型のみが企業が生き残る為には重要ということが顕かになりつつあります。事象が発生した時には、その事象の背景や経緯を調べ、その事象が起きた直接原因と目に見えていない潜在的な原因を探って、二度と起きないように目に見える形で仕組みとして対策を打つということが必要です。現場で、行動規徹底原因追求と恒久的対策として見える化をすれば、自ずと品質保証は出来ます。注意頂きたいのは、目先の解決だけを急ぐあまり現状打開策だけに集中しないで下さい。業務停止に至るような重大な事象が発生した場合でも、迅速な復旧を急ぐ必要はありますが、後で原因追求できる資料は、最低限でも保存して下さい。

以上