今回は、これまでの標準化に関する動きの最終目的でもある品質保証についてお話しします。品質管理という言葉も一般的ですが、小生は、ものづくりの観点から品質保証の方がイメージしやすいのでこちらを採用しています。
先ず品質保証を行う上で最も重要な仕事は検査とご理解下さい。品質保証=検査精度と言ってもいいくらいです。検査精度を上げる為には、検査項目や方法などの検査規定を決める必要があります。保証すべき品質は、お客様や市場の要求仕様です。要求仕様の製品への組込みは、設計段階で決められます。従って、検査規定は設計仕様に基づいて作成されます。検査規定は、従来は、検査部や品質保証部で作成されるのが一般的でしたが、最近は、設計部がこれを決める会社も出てきています。特に、生産方式の主流が一括大量生産から多品種少量生産に移行してからは、この傾向が強いようです。設計と検査を分離独立し責任を明確にすることで品質を担保するという従来の考え方に対して、顧客要求仕様対応の最上流にいる設計で最終工程の検査までを視野に入れた設計をするほうが効率的であるという考え方で、フロントローディングと呼ばれています。フロントローディングの考え方では、理想的には標準化も設計の仕事という位置づけです。既に、個別受注生産型の製品では、この考え方が一般的になりつつあります。余談ですが、フロントローディングという言葉も、製造業以外でも使われ出しており、最終目的を視野にいれて、出来るだけ早い段階で事前に手を打つ方策として理論化されつつあります。POS(Point of sale 販売時点情報管理)に代表されるようなデータ発生源主義「真のクリーンデータは発生源でのみ作成される」の延長にあると考えて頂いて結構です。
ソフト開発の分野では、当初から設計が検査に関与することが一般的ですが、一方で検査手法が確立出来ていないという状況でもあります。その遠因としては、設計部門と独立した検査部門の存在が無いことがあるとも愚考しております。その為、組込みソフト分野やPKGベンダーでは独立した検査組織を持つ会社も出てきました。組織を分けて品質保証責任の明確化を行い、製品品質を統制するというものです。尚、責任の明確化を行う為に最も有効な経営施策は組織分割です。設計で検査仕様を決めたとしても、それを検証し実施する部門を分けることで、製品仕様の二重チェックを行うこととなり保証される品質は飛躍的に向上します。
品質保証が第一に検査によりなされるとお話ししました。QCDの観点では、Qを上げるとCも下がるとお話ししましたが、標準部品やモジュール化とも関連して総合的には、その傾向で間違いはないのですが、検査だけを取り上げると検査精度を上げると検査にかかる費用も上がり、Qを上げるにはCも上がるという矛盾が生じます。勿論、クレーム処理に対応する費用を減らすことにはなりますが、クレーム処理対応コストは、予測される費用であり現在発生している費用ではありません。加えて、クレームは、決してゼロにはなりませんので、必ず発生します。このように、会計上の検査費を中心とした品質保証費は、見えている費用と将来予測をした費用の二つがあり、現在費用を上げると予測費用が減るという反比例の関係を想定した品質コストという考え方(予測費用を含めたコスト)で管理されるようになってきました。予測費用分は、会計的には準備金扱いで計上されることが一般的です。又、検査を最後に行うと不良品として弾かれた製品を解体するにも費用が懸ります。その為、最終検査では出来るだけ不良品が出ないように製造工程の途中でも検査を行うことが一般的です。この検査を中間検査とか工程間検査(工程検査)といいます。部品の受入検査から中間検査を経て最終製品検査というように検査にも順序があり、検査回数と最終検査不良率にも反比例の関係があります。実際に、最も効率的な検査回数を決めることは難しい問題で、経験や生産設備の性能にも左右されており品質保証部や検査部だけでなく生産技術部門を巻き込んで考えられます。又、量産品については、量産前に、試作品を実際に組上げる量産試験というものがあり、この中でも検討されます。以上のように品質コストは、他の費用とは異なり同じ費目の中で現在費用と予測費用のバランスが重視される特殊な費用とご理解下さい。開発費を資産として計上するか?否か?の議論がありますが、これは品質コストの考え方に影響されています。つまり資産として計上した場合は、原価償却費が計上できますが、同時に品質コストも考慮する必要がでてきます。元々、IT分野などメーカ以外の業界では品質保証の概念は弱いのですが、品質保証という考え方そのものも、明確な形で業務の中に組み込まれていない会社が多いのも実態です。ベンチャーや下請型企業など、品質保証が後回しになることも多いのですが「全ての仕事は品質ありき」というのが、小生持論であり指導方針にしています。
以上