図面ありきと部品表ありき 営業雑感No.36

 小生、付加価値とQCDを業務の柱と考えており、その基礎は小生が長らく担当しておりました製造業向けIT活用に根差しております。ものづくりに関する知識は、他業種へ応用することが可能で、経営不振のDIY店に、大手メーカを早期退職して帰省した長男が、工場の現場改革の考え方で、売場と在庫の大改革をし、劇的に業績回復をさせた実例が鹿児島にあります。又、カンバン方式に長けたトヨタマンは旅館から役場まで様々な業種で活躍されており、象徴的に成功した会社がニトリです。

 先ず「図面ありき」という考え方をお話しします。製品を作る際に最初に出来上がるのが図面です。図面が出来ないことには何も始まりませんので「図面ありき」です。図面は勿論、設計部門の方が作られますので、製造業においては設計部門に優秀な人材が集まっておりエリート集団を形成しています。

 図面の中で、最初に描かれるのは全体構想図です。全体構想図を基に全体図(製品図)が描かれ、次に組立図、最後に部品図という順序で図面は描かれます。車を例にとりますと、先ず製品イメージ図が描かれ、製品図から車体図やシャーシ図・エンジン図というように大きく分解されて部分図が描かれます。その後、更に分解されて最後はビス一本までの部品図になります。組立図というのは、車体図のように全体図と部品図の間にあるものです。ここで、留意頂きたいのは、ものづくりの最初は、全体から部品という流れで設計されるということです。ものづくりというと部品を組み上げて製品にするイメージがあり、部品から全体という流れのように考えがちですが最初の構想・設計段階では逆です。全体構想図を分解する際に考慮しているものは、主に数字で表現されており仕様と呼ばれます。

 例えば携帯電話を使用する際には、手のひらの大きさで制限を受けます。このように設計する際に考慮すべき、大きさ・重さ・性能等を明らかにしたものが仕様です。仕様は寸法や重量・材質などで全て図面の中に数値として組込まれて表現されています。図面に顕されている寸法などの数字は、全て仕様に基づき計算された結果です。設計作業とは仕様に基づく強度などの技術計算と図面描きに集約されます。別の言い方をすれば、設計とは、最初に仕様を組み込む前提となる器(全体構想図)を描き、その後、仕様から計算された数値に基づき、全体図、組立図、部品図と順次、分解していく業務といえます。

 実は、これまで小生がよく使っています「目標ありき」という考え方は、この「図面ありき」を理解して、小生の中でより確実なものとして理解できました。ものごとを成し遂げる為には、最初に目的を明確にし、その目的を具現化する目標として基本構想を作成し、時間軸や体制などを考慮し細かな業務計画を作成するという順序です。更に、この構想分解の過程で目標が分解されます。つまり、ものづくりの「図面ありき」と業務遂行の「目標ありき」は同じ概念と手順を持っております。

 今度は、設計に続く製造段階での考え方「部品表ありき」についてお話をします。設計から製造への情報受け渡しは図面に集約されていますが、図面と同時に渡されるのが部品表です。部品表とは製品1台を作る為に必要な部品の種類とその必要数を図面から拾い出したものです。QCDの概念では、Qが図面で規定され、Cの主要要素である材料費が部品表で規定されます。一般的にBOM(Bill of materials ボム)と言われているものも部品表とほぼ同じとご理解下さい。

 ものづくりは、部品から組み上げますので、設計とは逆に部品から製品(全体)へという流れになります。製造段階では、先ず部品表を製造用に変換する作業から始まります。設計から出された部品表は、製品を作る為に必要な部品を集計したものですが、ものづくりの順序は考慮されていません。車で例えますと、エンジン・シャーシ・車体とそれぞれが別に組立ててから最終的に車として組上げられます。この作業は組立図を作成された時と逆に辿っていくことになります。この時、エンジンを組み立てるには部品表からエンジンを組み立てる為に必要な部品だけを選びだす必要があります。このように、部品表を組立図で規定された組立順序にしたがって、ばらす作業のことを設計・生産部品表変換といいます。製造関係者が一般的にEM変換といっている作業でE-BOM(イーボム 設計部品表)をM-BOM(エムボム 生産部品表)に変換することです。設計部品表は部品名と数だけで表現されたExcelのようなものですが、生産部品表は部品から製品に至るまでの中間品を含んだツリー型の構造を持っています。因みに生産管理システムで使われる部品マスタは生産部品表(M-BOM)から作られます。

 生産部品表のツリー構造を一段上がる為に必要な工数や設備を検討する作業を行うのが生産管理部門の仕事です。生産計画では、主に標準の組立時間、所謂リードタイム(LT)が計算されます。LTの累計がDの基本要素です。又、工数が計算されることで、材料費と合わせCも決まります。設計から始まり部品表変換が終わって初めてその製品に関するQCDがほぼ規定されます。

 尚、組立の際、例えば手の入らない部分のネジ締めの必要がある場合、その作業が可能になる道具(首の長いドライバーなど)を設計・製作をする部門が生産技術部門です。この生産の為の道具は、治具と呼ばれ金型などがその代表です。又、生産技術部門では、部品を流す製造ラインの設計やロボットなどの自動化機器も設計・製造しますので、設計部門の一部と解釈されている方が多いのですが、製造部門の一部です。この生産技術部門が独立した会社がエンジリアニング会社ですので、設計会社とは区別して考えた方がいいと思います。

 ものづくりの手順としては、図面が描かれ、部品を拾い出して設計部品表が作られ、その設計部品品表と組立図を見て生産部品表が作られて、製品のQCDが検討されるということになります。因みに、生産部品表こそがプロジェクト計画表の原点です。生産部品表のLTに着目して抜き出したものが工数計画表で、プロジェクト計画表そのものです。又、実際には、一つの工場で複数の製品が製造されますので、製品毎の生産部品表を並べて、製造数と指定納期から優先順位を決めて、ものづくりがなされます。この作業はプロジェクト管理でも同じです。生産管理システムとプロジェクト管理システムは、同じ概念で作られており、プロジェクト管理システムとは、生産管理システムの工数に関するサブシステムと位置付けて理解して頂いて構わないと愚考しています。それゆえ、プロジェクト管理は製造系のQCDでコントロールするべきというのが持論です。

 ものづくりの基本である「図面ありき」と「部品表ありき」、QCD同様、日頃の業務遂行においても参考にして頂きたい製造業での基本的な考え方です。

以上

2019年3月3日 | カテゴリー : ものづくり | 投稿者 : csf-ishii