会社のモラル 営業雑感NO.31

営業雑感 No.31 会社のモラル

 前回は、古代為政者の歴史からルールとモラルの関係を「ルール重視→モラル重視→ルール重視→モラル重視」と交互に入れ替わっているという持論をお話ししました。会社組織においても、このスパイラルは存在すると考えます。企業においては、創業期はモラルが優先し、繁栄期に入り組織が大きくなるにつれルールが整備されますが、その後、企業マインド醸成のため社是などによるモラル回帰が必ずなされています。

 この流れは必然ともいえるもので、創業期は、創業者と思いを同じくする数少ない従業員との間で忠誠心的なモラルが醸成され効率的な組織運営がなされますが、繁栄期になり組織が大きくなると様々な考え方を持つ従業員が増え、組織全体を素早く一定の方向に行動規制できる経営体制の確立やお客様や株主などステークホルダーとの関係を定義する必要から、様々なルールを整備せざるを得なくなります。その後、複雑多岐になったルールの穴や不徹底が散見されるようになり、その原因をモラル低下と結びつけて創業期モラルへの回帰を行うというパターンです。

 尚、ルールとモラルがバランスしている時代に世が治まっていたように、どちらかだけに頼ることなく企業環境に順応できるように上手くルールとモラルがバランスしている時に飛躍的に業績が向上するとみています。創業期に急拡大させる創業者カリスマの場合、ルールとモラルの両面で従業員の行動を制御出来ますので、個人の中で、ルールとモラルがバランスしています。このように、自らはルールと折り合いを付けながら、モラルの醸成により他人の行動を制御出来ることが、カリスマの必須条件と愚考しています。

 会社組織におけるルールとは、言うまでもなく社内規定集や各種通達等、文書として見える化がなされています。会社のモラルとして、判り易いのが社風です。社風の見える化は難しいですが、社是や各種行動規範などが、これにあたります。尚、小生は、部署毎に会社のモラルを体現している人を「会社のDNA」と呼んでいます。このDNAの存在が組織運営のキーマンになると考えています。ご推察のとおり「会社のDNA」は組織長とは限りません。ベテラン営業、技術者、事務担当の方の方であることのほうが多いです。かつて、企業改革が流行った時代に、改革成功条件の一つに事務のお局の存在が必須とされていました。

 ルールそのものは文書化すればいいだけですので、簡単で即効性がありますが、ルールを作り・管理するだけの部門やルールが機能するように監視し懲罰を行うしくみ等が必要で、全て社内管理コストとなり付加価値観点ではマイナス効果となります。一方、モラルは、従業員自らが自らを律して行動しますので付加価値観点ではプラス効果となりますが、モラルの醸成には時間が懸りますし、懲罰に頼ることなくモラルを醸成するしくみや指導する人が必須となります。このモラルを醸成する上で「会社のDNA」の存在が必要とされます。

 最近は事ある毎に規定や規制を求める議論が多くなる傾向がありますが、ICTに代表されるように取扱商品の激しい革新が続いている時は、一度決めたルールが直ぐに陳腐化する傾向が大きいために、ルールに縛られずモラルを重視するべきと愚考しています。環境変化に追従していくための手段は、以下になると考えます。

 先ず、企業基本方針(企業ビジョン)を再度明示する必要があります。企業基本方針は、ルールであれモラルであれ、企業活動の根源となるその企業の目指す最終着地点を示しています。環境変化により着地点が変わることもあります。企業基本方針に照らして環境の変化を捉えることが企業の環境適応の第一義と考えています。

 次に、既存ルールを見直し、現状に合わせた必要最低限の規定集を作成します。企業が付加価値を生むしくみ(ビジネスモデル)はルールで規定されるもので、モラルで規定は出来ませんので規定集が重要になります。但し、ルールはビジョンの前にはなく、ビジョンを具現化する為のものですからルールだけを見直す愚は避けたいものです。又、現行ルールには、ルールを作成、管理、監視するしくみが伴っていますので組織改革の必要もあり、既存組織の抵抗も予想されます。その際には、基本方針に照らして組織の為のルールを排除するしかありません。

 最後に、小生が最も重要と感じていますモラルの醸成です。遺憾ながらモラルの醸成が不得意な企業が多いと思います。その原因は、いくつか考えられますが、とりわけ取締役を含めた管理職の行動に課題が多いと感じます。ルールは決められていても管理手法が管理職任せになっており、属人的な経験に基づいた手法で行う為、必然的に管理レベルもバラバラになるケースが多いようです。加えて、部下の抱える問題解決に向けても管理職はルールを持ち出すだけで、部下のモチベーションに着目してコーチングや適切な「ほうれんそう」が出来ている方が少ないと感じています。小生は、意思決定は業務遂行の基礎となりますが、ルール優先であり短期で理解出来ますので、管理職一人で行うのではなく部下も参加した意思決定チームを設け、部下に意思決定に参加させることでモチベーションを上げることも必要と考えています。その上で、業務遂行はルールとモラルの併用となりますので、管理職には「ほうれんそう」を中心とした業務遂行能力を磨いて頂くしくみづくりも重要と考えます。モラルの成果としては職場の雰囲気として顕れます。職場の雰囲気は、管理職だけが作るものではなく、圧倒的多数を占める従業員の行動に顕れます。意思決定と業務遂行を分離し、組織全員の活発な議論を誘導する方策は、モラルの醸成の有効手段と愚考しております。但し、組織のモラルは上位者のモラルによって決まりますので、上位職の会社基本方針に照らしたモラルへの自覚が最優先であることはいうまでもありません。

以上