東京国事情 営業雑感No.10

 小生、福岡から東京へと拠点を移した際に、東京は日本国ではなく東京国であり、東京に住んでいる人は東京人だと感じました。その思いは長崎に来てから、より強く意識するようになりました。東京とそれ以外の地域では文化がまるで違っています。山手線の全ての駅前が福岡天神の賑わいですので、人・お店・情報が溢れていると考えて下さい。

 先ずは、身近なところでは食べ物関係です。海産物は圧倒的に長崎が美味いです。我が家は生協の宅配を利用することが多いのですが、アジの干物など価格は東京と変わらないのですが、味は段違いです。今にして思えば、よくあんなものを食べていたくらいの感覚です。正月の餅でも同じ思いをしました。意外かもしれませんが、肉類は東京が安く感じますし、野菜類もスーパー価格では差はありません。東京では近郊の野菜栽培が盛んですので、その影響と考えます。道の駅などでは違いがあるようですが、残念ながら我が家は運転免許を持った人間がおりませんのでその恩恵に預かることが出来ません。

 一方、夜の居酒屋は長崎のほうが安くて美味しいです。東京ですと夜の飲み会の平均金額は、長崎の三割増しの一人6000円前後です。但し、職人が一流と言われる寿司屋、フランス料理等は東京に軍配が上がりますが、予算は軽く一人20000円を超えますので価格的には比較になりません。又、焼き鳥、蕎麦屋、天婦羅屋等では雰囲気、価格帯など選択肢が豊富なのが東京です。加えて、アフリカ料理から南米料理まで東京で食せない料理はありません。残念なのは、お母さんや大将が一人で切り盛りしているようなお店が都心からは姿を消しつつあることです。尚、昼食は、圧倒的に東京に軍配があがります。立ち食い蕎麦やライトバンで売りに来る弁当屋などワンコイン以下でいろいろ好きなものを気分と体調次第で選べます。

 次に、交通インフラについてお話しします。地下鉄の発達で東京の基本移動手段は鉄道です。バスは、朝夕に最寄り駅まで乗る以外はビジネスではあまり利用しません。但し、最終電車乗り遅れ組の為に深夜直行バスが主要駅とベットタウンの間で走っており、こちらは、いつも予約で満員です。鉄道ダイヤは、どこも始発が4時台で、終電は25時台(自宅最寄駅着26時台)です。その間、快速、特急、急行等含め10分間隔くらいで走っています。余談ですが、東京では通勤快速など特急より早い時間限定電車がありますので少し戸惑います。通勤時間は平均1時間半くらいで、距離的には遠くても鉄道網の発達で佐世保や佐賀から長崎に当たり前に通勤している感覚です。新幹線定期を利用して軽井沢や熱海、静岡から通うセレブも沢山おられます。小生が上京して最初に入った社宅は、駅の廻りは何もない柿生という所で、家内は大都会にきたつもりが、住んだ所が元の福岡とはあまりにかけ離れた田舎町で、初めて駅に降り立った時は、しばらく呆然としていました。野菜の路面直売棚が並び、雑木林の上のほうに遠藤周作氏の「狐狸庵」が眺められるなど、まさに僻地の感がありました。おまけに駅から社宅までは徒歩15分ですので、朝は5時半起床、7時前の電車に乗り、猛烈ラッシュに揺られて丸の内まで行き、夜は、主に深夜タクシーで1時間半かけて3時前後に帰り着く毎日で、通勤だけでも一仕事でした。こちらではあり得ないラッシュの凄さが日常です。一度乗り込むと下車が集中する駅まで、どんどん人が詰め込まれ全く身動きが出来ません。又、4月は地方出身の東京新人が多いので、乗り降りの効率が悪く、混雑により電車が遅れるのは当たり前、社内や駅構内でケンカもおきますし、電車が5分遅れるとホームに人が溢れますので改札で入場制限されることもあります。座席の無い車両もありラッシュ緩和というより人を貨物に見立てた貨物車両のようだと感じていました。

 変わったラッシュは新幹線や各社私鉄の土曜の下り特急始発です。これには風物詩があり、三種のグループ「ライフジャケット組」「リュックサック組」「ポロシャツ&ブレザー組」に分かれます。ご想像のとおり「釣り」「山歩き」「ゴルフ」のグループで降車駅が各組それぞれで大体決まっており、グループ毎に揃ってぞろぞろと降りていきます。ポロシャツ&ブレザー組が、駅改札から目的のゴルフクラブバスに蟻の列のように移動する風景は、チャップリンの喜劇映画の一コマのようでした。又、平日、土日に拘わらず終電は酔っ払いばかりの凄いラッシュで、慣れないと怖さと匂いでなかなか乗れません。

 尚、主要路線は日中3~10分間隔で運転しており、山手線などSFのようにずっと繋がった電車がぐるぐる廻っていてもいいくらいです。勿論、昼間も福岡のラッシュアワー並みです。このスピードで人が動きますので、行動予定は最低でも30分刻み、仕事の出来る人は10分刻みで、予定ビッシリです。地方は普通1時間刻み予定しますので、仕事におけるリードタイムでの差が歴然です。世界に誇れる今の東京の発展は、このリードタイム優位を活かした結果ではと愚考しております。

 最後にビジネススタイルについてお話をします。一番大きく違うところは地縁です。職住一致という言葉に顕されますように仕事の環境と生活の環境が近いことが一つの理想とされていますが、東京では通勤に一時間以上かかりますので、一旦、会社を出るとまず会社の人に会うことはありませし、近所付き合いも子供の関係でもない限り殆どなく職住不一致です。時間帯で関係する人が別々で、仕事と生活だけでなく趣味も交わることはなく、個人の判断でそれぞれの集合体に属しています。昨夜の飲み屋の行状が翌日に噂されたり、会社帰りに友人と偶然会って拉致されたりということは絶対にありません。加えて、地方は同級生の繋がりにも校区など地域が影響しますが、中高一貫など東京では私学が公立より上位に位置づけられており、塾通いも含め小学生から地域に拘らない環境にいます。友達付き合いがネットでしかできない子供が生まれる遠因にもなっていると愚考します。ちなみに、三世代続く家は、都内には下町の商売人を除き殆どありません。大半の人は昭和の時代に郊外に移転しています。以上のように、東京には一部の例外を除き地縁は存在しません。地縁に近いものは、大学の同窓会や県人会です。特に、大学同窓会(特に六大学)はかなり強いものがありますし、例外的に都内中心部に元華族や大地主など途方もない大金持がおられ、その地域に隠然たる力を有しておられることはあります。

 何かと煩わしいことも多い地縁ですが、地縁が明確に存在する地方と地縁の無い東京国のどちらに軍配を上げるのか、今の日本は考えどころだと思います。

以上

2018年9月2日 | カテゴリー : 閑話休題 | 投稿者 : csf-ishii