組織を運営していく為には、次の3つの機関が必須となります。それは「意志決定機関」「業務執行機関」「評価機関」です。従来の日本においては、管理職一人で三つ全てを背負っており、社長、取締役、部長という階層構造になっていました。ところが、平成17年に制定された俗称「新会社法」では、三つの機関の分立を定めています。完全に独立した三つの機関を有した会社を「委員会設置会社」といい今回の制度改定の目玉となっている会社組織ですが、旧来型会社組織も多く残っております。そこで、折衷案的に意志決定を行う取締役とは別に業務執行責任者として執行役員制度をとる会社が増えました。蛇足ながら執行役員と執行役とは別の存在で執行役は「委員会設置社」にのみ存在します。
会社における最高意志決定機関とは取締役会です。意思決定の際に配慮すべき対象者をステークホルダーといいます。「お客様」「従業員」「株主」「社会/地域」と考えて下さい。どの対象者を重視するのかは企業ビジョンに書かれていることが多いです。尚、新会社法では、特に株主に対する配慮を法律で義務化しています。これがアメリカ型といわれる所以です。アメリカの企業は株主のものであり、取締役会も株主のご機嫌伺いの為に存在しているといっても過言ではありません。従って、株主たちが、会社を商品として売買するM&Aが一般化しています。この株主向けの企業活動がIRです。お客様向けがCR(お客様満足)従業員向けがER(従業員満足)社会/地域向けがCSR(企業の社会的貢献)となります。小生の唱える意志決定は、お客様第一を基本としています。
取締役会が会社の経営に関する意思決定機関であることは明らかですが、値引額の決定や生産機械の導入など業務執行に関する意思決定については、現場優先と迅速な意思決定を目的として業務執行機関に委ねることが多く、これが権限移譲です。従って、権限移譲がなされますと意思決定と業務執行が二つとも業務執行管理職に委ねられて独立性が失われます。そこで無条件な権限移譲が行われないように役職ごとに意思決定出来る項目と範囲を定めた権限移譲マトリックスが作成されており組織統制の基礎となっています。但し、適材適所の管理職を配置することは難しく、管理職が担当業務の素人である場合、業務プロである部下の行動を制限する業務指導が行われることもありますし、逆に担当業務一筋の管理職の場合、カリスマ化し何も考えず指示通りに動く部下ばかりが増えることにもなります。業務執行管理職に意思決定と業務遂行の二つを与える弊害をなくすためには現場にも意思決定だけを行う会議体などを設けることも必要かと愚考しています。その会議体のメンバーには、他部門の管理職やベテラン社員、スペシャリストなどに参加頂くことで、取締役会における社外取締役のような役割を与えては如何かと思います。形骸化した部会などを意思決定会議に模様替えすることで、意志決定においては意思決定メンバー全員が決定に係わることになり、管理職の独断で行うものではなくなりますので意志決定と業務執行が独立することが可能になります。勿論、議長は管理職であり業務執行上の責任も全て管理職が負うことになります。
次に評価の独立についてです。意思決定と業務遂行と評価の三つが一人に集中した結果の弊害は、最近のニュースでご存じのとおりです。しかしながら、組織の規模こそ違えどミニカリスマは沢山おられます。そこで、上司から部下への評価だけでなく、部下から上司への評価、同僚の評価、お客様からの評価などを加えた360度評価なるものも存在します。評価において最も重要なことは評価される側からみた公平性の担保です。360度評価のように評価者を増やすことも一つの方法ではありますが、評価につきものの好き嫌いをどこまで排除できるかも重要です。ある人事部門幹部から聞かせて頂いた言葉をご紹介します。
「所詮、人事は好き嫌い。一に好き嫌い、二に好き嫌い、三、四がなくて、五に好き嫌い。」
好き嫌いにもレベルがあると教えられました。上記の場合、一の好き嫌いは、仕事のやり方の好き嫌いです。些細なこともまめに報告をする方と要点だけを自分の判断で適宜報告をする方とが、上司と部下の関係になると仕事での相性は最悪となります。二の好き嫌いは性格や信条の好き嫌いです。夫婦間では性格の不一致という便利な言葉がありますが、仕事の付き合いでも性格の不一致は生まれます。又、仕事においては、信条の違い(結果重視と過程重視・成果重視と人物重視など)も好き嫌い判断において、大きな比重を占めています。最後の好き嫌いは、生理的な好き嫌いです。仕事においては、好き嫌いは存在するものとして、生理的な好き嫌いは勿論のこと少なくとも仕事のやり方や性格や信条の好き嫌いを評価に持ち込まないことが必要です。この為、多くの企業が成果主義に基づく目標管理制度を採用しておりますが、小生は、これが返って好き嫌いを助長しているように考えています。古くから「功ある者には財を与えよ、決して職で報いるべからず、職は徳に従うべし」という言葉が伝わっていますが、松下幸之助さんは「成績上げたもんには金をやりなはれ、すぐに偉ろうしたらあきまへんで、偉いのと成績は別もんや」と言ったそうです。成果主義の曖昧な運用は「評価者の手抜き」に繋がり、目標設定を管理者に委ねることは好き嫌いを助長すると考える次第です。企業ビジョンに顧客第一を掲げるなら、お客様からの評価は必須と考えます。成果主義や目標管理は企業ビジョンに従い、評価も企業ビジョンやそれをベースとした組織ビジョンに従うべきというのが持論です。
以上