QCD 営業雑感No.6

 今回は、小生持論の基礎となるQCDについて少し掘り下げてみます。

小生定義 QCD

 Q(品質)お客様の欲するもの

 C(価格)お客様の購入可能な値段

 D(納期)お客様の必要な時に

 QCD実践の代表選手はトヨタの「カンバン方式」と愚考しています。カンバン方式を簡単に解説しますと部品から完成製品までを順次積上げる生産方式ではなく、自工程から一つ前の工程へ要求を出すことを完成品工程から最初の部品工程まで繰り返す方式で引っ張り生産方式ともいわれます。次工程へ渡す要求(数量、納入期限など)が書かれているものがカンバンです。言い換えれば次工程の要求納期を厳守するということを愚直に求める、徹底してDに拘った管理です。製造工程における無駄な時間(待ち、移動、準備、仕損)を撲滅する改善運動から着手され、部品納入業者や外注先を巻き込んだ「Just in Time」の考え方を汎用化しサプライチェーンマネジメント(SCM supply chain management)まで引上げられました。小生理解では「Just in Time」と「カンバン方式」は同義です。仕損撲滅や受入検査削減(納入者品質保証責任明確化)などの納期優先施策が結果的に品質向上に貢献していますし、次工程の要求に合わせて前工程で生産するという考え方は余剰在庫削減でコスト削減に直結しています。トヨタというとコストダウンや品質均一化というイメージを持たれている方も多いかと思いますが、徹底した納期短縮(D)によりQもCも格段に向上させているところがミソと愚考しております。

 一方、品質Qで経営を引っ張るやり方が「ブランド戦略」です。この代表がユニクロです。一昔前は、よく判っていない評論家に価格破壊の代表企業のように言われておりましたが、過去から一貫してターゲットとする顧客層が満足する品質を追及しておられます。その結果、従来、商社として他社に委託していた縫製での不具合を撲滅すべく一貫生産体制をとることとし海外工場展開をされました。生地など素材にも拘っておられ、3980円のGパンでは、これまで高級プレタポルテでしか扱われなかった岡山のメーカの藍染が採用されています。肝心のデザインについてもディズニーなど著名ブランドとの提携に加え、国内外の新人デザイナーに門戸を開放する仕組みをお持ちです。因みにユニクロは流通業ではなく製造業と小生は捉えています。尚、お客様の満足する品質を得る為に、お客様を絞っているところがミソです。無印・ニトリ・イケヤなど、最近、伸びているお会社は、共通的に各社が限定したお客様の求める品質に拘ったブランド戦略をとっています。特定のお客様で形成される市場をニッチといいますので、ニッチ・ブランド戦略と小生は解釈しています。

 最後にⅭに拘る戦略です。この分野は小生力不足でまだ研究中です。一例として、品質コストという考え方を取り上げます。後工程で様々な検査を実施して不良を取り除く方式のコストより、作業現場での「品質の創り込み」として直接工数にコストを掛ける方が安価という考え方が主流になっています。前述のニトリでは三段BOX等の組立家具を販売しておりますが、棚材にビス穴を空ける工程では、図面から直接板材に罫書きをしてドリルで穴を空けていました。この方法では罫書きとドリル操作の二つの作業で職人による手作業が発生します。そこで、板の上に置くだけの鉄板製穴ガイドを新たに作成し、位置センサーと連動する自動ドリル機を開発されて手作業を完全に無くされました。結果、品質均一化による仕損減少とリードタイム短縮の両面で直接原価削減を実現しました。この鉄板のように製品製作の過程で必要となる部材を治具といい、代表的な治具として金型や移送時ショック防止のための段ボール等の梱包材があります。これら治具の設計及び管理、上記自動ドリル機のように溶接・組立・検査など生産工程で使われる生産機械やロボットの設計・製作、制御プログラム開発、メンテナンスを担当しているのが生産技術部門です。余り馴染みのない部門ですが、品質コントロールの核となる組織と愚考します。一般的に○○エンジニアリングという名前の会社は、生産技術分野を担務としている会社が多いです。余談ですがニトリの生産工程を劇的に変革された方は、トヨタでカンバン方式を支えた生産技術エンジニアと記憶しております。

以上のように、QCDは、QCDのどこか一つを改善すればQCD全てが改善されるようになっています。但し、選定した一つを徹底して管理することが必須です。あれもこれもでは成功しません。あくまでも他の要素は、一つを成し遂げた副次効果にすぎません。

一方、IT業界においてQCDを切り口に競争戦略を考えるとどうなるでしょう。QもCも多少の違いがあるにせよ、決定的な競争優位を確立できそうにありません。前回IT革命でお話ししましたようにコンテンツとオペレーションの時代に入っておりますので、Dに拘った競争戦略が重要だと考えております。つまり、コンビニのようにお客様の近くにいるという優位性を付加価値とする戦略です。但し、Dをお客様に見えるようにすることが必要です。例えば、障害時30分以内到着などのお客様との約束です。これが、サービスレベルアグリメント(SLA)です。これはお客様への宣言であり、只、お客様の近くに居るだけでなく、SLAを維持する為の要員確保やスキル獲得が必要となります。IT以外の業界でもクイックレスポンスを全てに優先させる企業戦略もありうると考えています。その為には意思決定の迅速化が不可欠ですが、これは、後日のテーマとします。

以上

2018年8月3日 | カテゴリー : QCD | 投稿者 : csf-ishii