賃上げとお上 営業雑感NO.354

 参議院選挙が近づいてきました。参政党やれいわなどの新規政党がSNSを活用した選挙活動で注目されています。選挙結果をみて、SNSと選挙について改めて考えて見たいと思います。今回は、前回に引き続き既成政党の考え方にある矛盾を探ります。

 今一番おかしいと感じていることは、与党を中心に議員のいう賃上げ発言です。そもそも、賃上げは、企業経営の根幹に属する問題であり、企業の利益分配として経営者が決定するものです。労働者の立場からは、賃上げは労働組合と経営者の闘いによって勝ち取るものという構造が本来だと考えています。ところが、最近は労働組合と経営の対立の構造は先鋭化することも少なくなりストライキも余り聞かなくなりました。しかしながら、そこには、一切、政治の入る余地はありません。しいて言えば、労働組合は革新政党を応援し、経営者の集まりである経団連などが保守政党を応援するという、政治家と支援団体という構造から政治家からそれぞれの支援団体にお願いするというだけではないでしょうか?何故、この矛盾を指摘する方が表に出てこないのでしょうか?

 一方で、政治が強く関与する職種がないわけではありません。公務員を筆頭に、医師、弁護士などの国家資格認定者などは法律が前提となっていますので、政治家の関与が可能な筈です。しかしこれらの団体も支持政党を持って族議員と言われる利益代表的な政治家を応援していますので、政治家発言として明言されることはありません。又、官僚と政治家は三権分立でうたわれているように政治家の属する立法府と官僚の属する行政は、それぞれが独立した対立構造にあります。官僚と政治の戦いは、中国四千年の歴史でも顕在化しており、歴史に様々な事件として登場しています。我が国では、第二次大戦後に吉田茂を中心に官僚が自らの信念を貫く為に政治家に転身し、長らく戦後政治を動かす起点となった吉田学校が形成されて与党の中心に君臨していました。ここにくさびを打ち込んだのが、吉田に対応する勢力であった戦前からの議員である岸信介の後継者達です。その手法として、官僚からの政治家への転身ではなく、三権分立の枠組みを超えて政治家が官僚を直接動かす為に組織を動かすうえで最も大きな力である人事権を使いました。本来、官僚の人事権は各省庁の次官を頂点とする省庁別官僚組織の内部で完結しておりました。そして、次官経験者が政治家に転身し、行政府の考える政策を実現するという構図です。そこに、各省庁の壁を排除し、官僚の横暴を抑えるという名目で、各省庁の持っていた人事権を、全官僚を統括する人事権として集約する総務省を設置し、総務省と首相官邸が緊密に連携することで、政治家である首相が官僚の人事権を掌握して官僚を制御し、政治主導の政策を実現する構造を作りあげました。学術会議への介入もこの官邸主導の延長です。しかしながら、これまでも忖度があったであろう縦組織に属していた方が、先生とおだてられることになれている方へ取り入るのは容易だったのではないでしょうか?官僚と政治家の忖度による癒着が始まり、政治主導でも官僚主導でもない曖昧な政策が増えたと感じています。今回選挙で政権交代が実現してもこの政治主導の構造を手放すとは考えにくいので、国民的人気に支えられた首相のしたことに忸怩たる思いを持っています。

 賃上げ議論と官邸による官僚制御、いずれも大きな問題でありながら国民的議論にならない背景には、日本人の意識の根底にある「お上」という考え方があると考えています。つまり、賃上げも官僚制御も「お上」である首相がうまくやってくれると考えているのではないでしょうか?日本人のこころの内には「お上」を敬う社会主義的な考え方があり、その結果、賃上げ発言も、官僚制御についても問題と感じないと愚考しております。

以上

2025年7月13日 | カテゴリー : 閑話休題 | 投稿者 : csf-ishii