IT産業の今後(1)特異な我が国の産業構造 営業雑感NO.320

 総選挙では与党が大敗しましたが、政権交代とまではいかないようです。米国大統領選挙の行方も混沌としております。政治については、しばらくは静観したいと思います。

 前回、新時代の幕開けを予言させていただきましたが、小生の属しておりますIT業界では産業構造までも変わることになります。今回から我が国の新しいIT産業の姿を考察します。第一回は、我が国独特の産業構造を考えます。

 IBM、富士通、ユニバックなどの汎用機メーカは退場しました。しかしながら、汎用機メーカが半世紀の間君臨しましたので、少なからず我が国のIT産業には、その時の構造が未だに存続しています。米国では既に主役の交代が行われていますが、IT産業の構造は、大きく変わってはいません。我が国の産業構造が変わらなかった背景を考えます。

 先ず、我が国に古い産業構造が残っている一番の要因はメーカ系代理店という独特の販売制度にあります。ITに限らず我が国にはメーカ別代理店制度が古くからあり、自動車や家電など、海外メーカが我が国に参入する際の大きな障壁となっておりました。ITも同様で、全世界で直接販売が基本のIBMも我が国では、一部の機器について代理店制度をとっておりました。我が国代理店制度の特徴は、本来メーカが実施すべき顧客サポートを肩代わりする形で手数料を得る形態にあります。従って、メーカが代理店の認定において研修などを義務付けています。ですから、メーカと代理店は対等の関係ではなくメーカに従属する形が強くなります。この代理店制度の根幹にあるのは、顧客サービスの充実です。メーカでは要員数の制限がある顧客サービスを代理店が実施することで、きめ細かい顧客サービスが提供できることになります。海外メーカが我が国に進出する場合には、最初からこの顧客サービスに勝てる仕組みを作ることが必要となり、参入障壁となっておりました。逆の言い方をすれば、本来メーカと顧客との間で切り分けられるべき役割分担が、代理店が間に入ることで、顧客の為すべき役割が軽減されることになります。例えば、本来、ユーザがシステムを使用する際に教育を受けて自分で操作すべきコマンドなどを、代理店が顧客に代わって教育をうけて操作することが可能になります。メーカ側でも、本来、ユーザ教育を行う為には、顧客視点で判りやすいテキストやQAへの対応などに注力すべきですが、代理店が間に入ることで、メーカ視点での難解なテキストでも構わないことになります。尚、汎用機メーカに変わって主役となったマイクロソフトやオラクルが我が国に進出した際に、富士通やNECという汎用機メーカにOEMで商品を提供しメーカ代理店を活用したことも代理店構造の延命に繋がりました。

 もう一つの特異な存在がSEです。我が国ではSEがプログラマより重宝される傾向があります。本来のSEとは、様々なシステムを顧客に適用させる為にプログラムを作成する存在です。従って、プログラマの延長にあるはずなのですが、企業向けの大規模システムを開発する際に必要となる要件定義やプロジェクト管理がSE作業の上流工程と定義されてプログラマとは切り離された職種となりました。加えて、上記、代理店制度の副作用からメーカSEが、SE職種の頂点となる構造が形成されました。そもそもメーカSEは自社で製造されたOSやパッケージに詳しいだけでスキルが高い訳ではありません。汎用機の時代が終わった時点でメーカSEは退場すべきでしたが、我が国では、SEの序列は変わらず残りました。IBMは、汎用機時代の終焉に伴い、最初にSEをリストラしています。メーカSEを頂点とした職種構造を待った為に、優秀なプログラマが育っていないように感じています。

 以上のように、我が国のIT産業の一番の特異性は、顧客へサービスを提供する代理店という存在と、メーカSEが今でも生き残っていることにあります。このことは、以前からお話をしていますように「at yuor own risk」の前提で成り立っているIT産業におけるメーカと顧客の関係が、本来のビジネス形態と異なっているということです。

以上

2024年11月3日 | カテゴリー : ICT | 投稿者 : csf-ishii