ガラ携 営業雑感NO.305

 前回、21世紀に入り、グローバルネットワークが電信網とインターネット網の二つに分かれたことについてお話をしました。現在は、この二つのネットワークは実質的にインターネットの基盤となっているIP網に統合されております。但し、電話網のアドレスである電話番号は消えた訳ではなく、NTTをはじめとする通信業者各社の局内で電話番号はIPアドレスに変換されていますので、電話番号でこれまでどおりに通話ができます。

 この二つに分かれたネットワークの中で、ガラ携が生まれます。ガラ携という言葉もガラパゴス携帯を短縮したものですが死語になっているかもしれません。そもそもガラ携が生まれた背景は、我が国と米国との電話通信分野の業界構造の違いに端を発し、マルチメディアという音声・画像・データの一体化技術を具現化する情報端末の開発競争に負けたことに由来します。

 先ずは、現在のインターネット社会を出現させた米国の事情をお話しします。米国においては、パソコンの延長上にある電話機に変わる情報端末としてスマートフォンがアップルによって開発されました。ここに、ステーブ・ジョブスの慧眼を感じます。そもそも米国では、ネットワークを提供する通信業者とコンピュータや通信機器を作る情報機器業界が完全に分離していました。スマホが出現したことで、電話機の終焉を感じた、電話会社各社は、電話番号を中心とした自社の電話網を早々に諦めて、IPアドレスによるインターネット網によるサービス提供に変革していきました。元来、スマホの無線基地局間の通信もIPによって接続されています。但し、これまでの電話番号による接続を保証するために、スマホ内部で電話番号とIPアドレスを変換してネットワークに接続する機器としてSIMカードが登場しました。このようにして、米国のネットワークは、スマホを基本端末として接続するIP網に全てが置き換わりました。

 一方、我が国では、電電公社として国策で電話網を構築したあとに、形式的に自由化を行ったようなものですので、株式会社と名を変えたもののNTTはネットワーク業界については隠然たる力を有しておりました。更には、IBMに対応する為に国産コンピュータ開発を掲げた当時の経済産業省に集められた、富士通・NEC・日立などのコンピュータ会社も電電公社配下の企業群でした。小生が富士通に入社した際には「電電公社が母親で、経産省が父親」と聞かされたものでした。その為、NTTから電話網を使ったマルチメディア端末として携帯電話の仕様が公開されると、各社ともに携帯端末の開発を競いました。ここで、マルチメディア端末として携帯電話を採用した我が国と、スマホを採用した米国で二つに分かれました。

 携帯電話をガラパゴス化した最大の要因として、発展途上国におけるネットワーク構築の問題があります。これらの国々は、有線接続が基本となっている電話網を構築するには、全国に隙間無く電信柱を立てる必要があり、その工事と建設費などから電話網の構築を諦めて、当初から無線によるスマホを使ったIP網を構築しました。当然のことながら情報端末としてはスマホが採用されたことです。

 以上のような経緯から、電電公社ありきであった我が国ネットワーク事情に合致して進化した情報端末が携帯電話でした。しかし、自由競争によって成熟した情報産業業界を持つ欧米諸国と、電話網を構築せずにIP網だけを構築した開発途上国では、電話機は音声端末として終焉し、スマホが情報端末として置き換わりました。結果、電話網の巨人に牛耳られていた我が国は世界から取り残されてガラ携帯を産み落としました。昨年、NTTの局間ネットワークも全てIPに置き換えられました。

 次回は、今後、構築すべき企業内ネットワークについてお話をします。

以上

2024年7月21日 | カテゴリー : ICT | 投稿者 : csf-ishii