今回は、小生の考える営業に不可欠な思想をお話しします。ビジネスマン一般でも通用すると思います。それは「知行合一 ちこうごういつ」です。
「知行合一」とは、王陽明が提唱した儒学の一派である陽明学の中で核となっている思想で、解釈は「知識と行動(経験)は緊密に関係しており、行動の中から新しい知識は得られ、行動を伴わない知識は無用である」というものです。陽明学そのものは、人間の欲を肯定したために朱子学と激しく対立し、中国や韓国では衰退しましたが、清末や江戸末期、明治維新では大流行しました。といいますのも、欲の肯定を問題視するよりも、行動こそ大切という考え方が、現状打破を目指す若者や壮士に支持されたものと愚考しております。幕府崩壊のきっかけとなる乱を熾した大塩平八郎や佐久間象山・吉田松陰など、多くの陽明学徒が幕末に活躍しています。維新の志士達も、これを実践したものと考えます。
小生持論は、仕事上のコミュニケーションにおいては行動が大切で、行動でしか評価されないというもので、この思想に合致します。商品知識を習得しても自らお客様に説明しなければ、何の役にも立ちません。又、技術検定に合格し資格をとっても実際にお客様のところで使わないと、それはただの看板に終わってしまいます。加えて、お客様は、会話の結果で営業がどう動いてくれるのかを期待しています。期待通りに動いてくれない営業とは会話も減り、ダメ営業の烙印が押されます。営業以外の職種の方も同様に、会話の中身は、会話の後の自分の行動で評価されることを肝に命じて下さい。
小生、行動につながる知識について、知見、知識、知恵という区別をしています。お客様との会話で得られる情報は、先ずは知見となります。知見とは五感で感じられた単純なもので、複数の知見が、絡み合って知識となります。人間の脳も、既に覚えている知識と関連づけて覚えるしかけをもっており、単独で存在する知識は記憶されていても思い出しにくい構造になっています。このような思い出せない記憶が全記憶の90%以上あるそうです。従って、会話内容を記憶するためには、過去の会話内容と照らし合わせたり、相手に質問したりして、それまでの知識と関連づけることが必要です。メモという行為も、耳で聞いたことを、手で書き、目で見ることで、複数の五感の知見として、それを関連づけて知識化する作業と言い換えられます。お客様との約束は、知見を知識に変える作業を怠っていると忘れてしまうので、必ず知識にする癖を付けて下さい。
次におこなうべきが知恵への変換です。知恵とは、知識を行動に移す為に必要なもので「知行合一」の「知」は知恵と考えます。知識を知恵に変える為には、これまで得た知識を使い、その延長にあるものを想像することです。妄想もその代表的なものです。妄想癖のある方が、知識量を増して様々な事象に対応出来るようになれば、知恵者や参謀になれます。小生は、提案や課題検討の際には仮説設定が大切と考えていますが、仮説設定こそが、妄想に変わる、仕事で知恵を働かせるしかけと考えております。仮説に基づいて行動した結果が知識として蓄えられて、その知識を加えて新たな仮説を立てて行動を繰り返すことで知恵が増えていきます。仕事の会話では、その場で知見を知識に変えながら相手が自分に何を期待しているのか?を知恵を絞って考え、すぐに行動でお応えすることを習慣づけて下さい。
ここでひとつ考えて頂きたいのは、スキルという言葉です。スキルとは「何かが出来る」ということであり「何かを知っている」ということではありません。スキルと知行合一は似た概念だと考えています。よくスキルを身に付けるといいますが、その為には実践が必要ですので、座学だけでは決して身に付きません。
余談ですが、iCD https://icd.ipa.go.jp/icd/icdというしくみがあります。これは、これまで資格取得など座学に偏りがちだった能力評価を、企業目標達成に向けて各部門で必要とされるスキルを洗い出し、各部門で必要とされるスキルの有無とレベルで能力を評価するしくみで、考課査定の新しい形といえます。更に、特筆すべきは、この仕組みが自己評価を基本としていることで、スキルをベースに組織と個人を同じ物差しで評価することで、小生持論である「人が変わるのは簡単、自分が変わろうと思った瞬間に変われる」という自己改革を仕事に適用する際の目標が判り易くなることです。是非、ご検討下さい。
最後に補足をしておきますが、行動を起こさなかった時に、行動の背景となる知識を知らなかった場合は、知らなったことを上司の指導やお客様との会話などで学習することで、今後は行動できるようになりますが、知っていたのに行動しないのは、行動できなかったのではなく、行動しなかったのですから、行動しないと判断した自分の心の中を覗く必要があります。知識では行動すべきと判っていても敢えて動かないと決めたものがモラルです。自分の行動を規定する心の中の最終の存在こそがモラルです。行動を起こす際に、知識で判断したことと異なる結論を出した時が、自分のモラルの在り方を探るのにはいい機会です、
「会話には行動で答える。知ったことは知識から知恵へと変えて、直ぐに実践する」
これが、営業とお客様のコミュニケーションの基本と考えます。
以上